これがモスバーガーの生きる道!

2009.01.10

営業・マーケティング

これがモスバーガーの生きる道!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

「モス史上最高!国産肉100%のうまさ」を豪語する、モスバーガーの「とびきりハンバーグサンド」が、暮れも押し迫った昨年12月27日に発売された。確かに美味い。が、その味以上にモスフードサービスが自社の戦略ポジションを活かした「巧い」商品戦略であることが覗える。

モスバーガーの属する「ハンバーガーショップ業界」においては、モスバーガーはもはやフォロアーのポジションにあったといえよう。後発のフレッシュネスバーガーに、その「作りたてにこだわる」という点など、ユニークさを模倣され、業界における差別化ポイントを失ってしまっていたからだ。
業界の「リーダー」にも挑戦できる「チャレンジャー」と、ひたすら存続のみを目的として生き残りを図る「フォロアー」のポジションにおける決定的な違いは何かといえば、「差別化」ができるかどうかにかかっている。コーラ業界におけるリーダーであるコカ・コーラに対して、ペプシコーラがレモンフレーバーを効かせたり、変わり種コーラを上市したりするのもチャレンジャーとしての差別化策である。

差別化には2つの種類がある。一つはリーダー企業が同じような施策を被してくる、「同質化」を図ってくるのを覚悟で、先んじて行うことを価値として展開する施策だ。コーラの例でいえば、レモンフレーバーは同質化されることを覚悟で行った施策であったと解釈できるだろう。もう一つが、リーダーが決してできないことを行う差別化である。変わり種コーラ、昨年発売されたペプシの青いコーラ、「ブルーハワイ」など、コカ・コーラには決して手を出さないはずだ。コーラらしからぬコーラに手を出すことは、リーダーにはリスクが大きすぎる。

モスバーガーの打ち出した、「合い挽きの100%国産肉」は、リーダーであるマクドナルドは絶対に同質化戦略はかけてこないだろう。なぜなら、同社が掲げてきた「100%ビーフ」というポリシーに反してしまうからだ。マクドナルドにも細長いバンズにポークパティをはさんだ「マックリブ」や、100円マックの「マックポーク」が存在するが、あくまでメインストリームではない。まして、「合い挽き」をうまさの最上級と位置づけることはあり得ないだろう。
リーダーが訴求してきたことと別の方向性を打ち出して、手出しができないようにすることを「理論の自縛化」という。今までビールの「コクや旨み」を訴求してきたキリンビールが、アサヒスーパードライの「ビールはキレです」という新たな価値観を打ち出されても、それに追随して同質化できなかったのが過去の例としてあげられる。

調達力において、コストリーダーであるマクドナルドに圧倒的に劣後するモスバーガーは、価格的な追随などすべきではない。徹底した差別化戦略をとるのが正解だ。「200円前後の低価格メニュー」ではなく、極めて戦略的に計算された差別化のポジションを実現した、今回の「とびきりハンバーグサンド」の登場は、かつてのファンとして極めてうれしい。
また、モスバーガーに通ってしまいそうだ。ダイエット中なのに・・・。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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