内定取消し問題をコーポレートブランディングから考える

2009.01.01

組織・人材

内定取消し問題をコーポレートブランディングから考える

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

新卒学生の内定取消しが話題になっています。企業にしても背に腹は代えられない状況もあり、止むに止まれぬ事情もあるでしょう。 しかし内定取消し問題は単なる人事政策にとどまらない大きな意味を持ちます。それはコーポレートブランドへの影響です。過去に例があります。今は亡きコムスンです。

「経営危機」を理由に過去大リストラをやった企業があります。今は亡きコムスンです。折口社長(当時)がコムスン経営に乗り出した直後の2000年、社員5千人の内1/3が退職に追い込まれるという異常事態が発生しました。
私は当時医療に関係のある仕事にいたため、「何という乱暴な会社か」と、その賞賛される折口氏の手法には大いに疑問を感じました。
しかし時が経ち、業界2位のニチイ学館、大手シルバーサービス等を次々と買収し、コムスンは日本最大の介護業者へとその後成長して行くのでした。皆、かつての大リストラのことなど忘れたかのように「ベンチャーの旗手」「センターピン理論経営」と折口氏はベンチャーだけでなく、経営全般においても、とりわけ介護・医療業界の「部外者」からは絶賛を浴び、ホリエモン氏と同じく時代の寵児になって行ったのでした。

さらに時代は過ぎました。結果はご存知の通りです。コムスンは厚労省のブレまくりの福祉政策の犠牲になったという意見もあります。あながち間違いではないとは私も思います。しかし折口氏自身がマスコミで喧伝していたセンターピン理論が、福祉「業界」でもまかり通る、と判断したその判断力はやはり間違っていたと思うのです。
結果としてコムスンだけが違法行為を行っていた訳ではないかも知れません。しかし「介護のマーケットポテンシャル」を読み誤ったのは事実でしょう。少なくとも経営者として。介護業界を知っている人間であれば、あそこで儲けるなんて、あり得ないことがわかります。

人の行く、裏に道あり花の山と株の格言では言いますが、介護で一発儲けようという見通しは、アイデアによるものではなく純粋に見当外れな方針だと思います。こうした経営者の失敗が、結果としてコムスンはもちろん親会社まで崩壊、消滅という結果を招いたのでしょう。

「新卒切り」は絶対に安易に行える選択肢ではありません。「やらなければ倒産」である、負のコーポレートブランディングをするのだということを、世間にカミングアウトする決断である自覚を持って、臨んでいただきたいと思います。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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