伊藤園「ウオーター グリーンアップル」の挑戦

2008.12.24

営業・マーケティング

伊藤園「ウオーター グリーンアップル」の挑戦

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

ファミリーマートの飲料のショーケースで見知らぬ商品を発見。早速購入し、一口飲んでみると衝撃の味が。さらにラベルの栄養成分表示にはなんとも不思議な事実が記載されていた。なぜ、そんなことに・・・?

これは、「フレーバーウォーター」ではないのかもしれない。
伊藤園はミネラルウォーターでは、カルピスから引き継いだ「エビアン」がある。エビアンをベースとした「フレーバーウォーター」ではなく、「低果汁ウォーター」とでもいうべき新たなカテゴリーを、ファミリーマート限定で実験的に展開していると言うことなのではないだろうか。実験商品である証拠に、同社のWebサイトの製品一覧にその記載がない。ニュースリリースも出ていない。

もっと驚くべきことが栄養成分表示から読み取れる。
<エネルギー 10~31kcal・炭水化物 3.5~7.0g・ショ糖 0~1g>・・・何と、幅があるのだ。
余談だが最近、宿泊価格に幅のある表示があるホテルに、実際の価格は幾らなのか問い合わせたところ「少し高めに表示してあるのと、季節の繁閑の差によって変わるので、オフシーズンの今なら一番下の料金の”だいたい6掛けぐらい”です」と言われてあまりのユルさに笑ったことがある。
ホテルなら季節の繁閑で、果実なら季節による熟成度の違いで、数字にある程度のユルイ幅ができるのはしかたがないという同様の事象なのだろうか。
「ウオーター グリーンアップル」の成分に幅があるということは、季節によって旬があって、美味しい時と、そうでないときがある?もしかすると、製品ロットによって、美味しいボトルと、ハズレのボトルがあるとか?
「ウオーター グリーンアップル」はこれはれっきとした工業製品である。製法上、仕方のないことなのだろうか?それを推してまで「低果汁ウォーター」という新たなコンセプトの製品を開発し、テスト販売に踏み切ったということだろうか?

今までにない、イノベーティブな製品を開発することは容易なことではない。
消費者からのアンケート調査も使い物にならない場合も少なくない。「まだ誰も見たことのない商品」を語れる消費者はそう多くはないからだ。
その場合、何を寄るべきよすがとして、製品開発を行うのか。伊藤園は自社の事業理念に回帰したのではないかと考えられる。
「コーポレートブック」を見てみよう。
http://www.itoen.co.jp/company/corporatebook/inv.pdf

<ひたむきにお客様のことを考え、人々の生活に潤いと健康を届けるため、「自然」「健康」「安全」「良いデザイン」「おいしい」という5 つのコンセプトで製品づくりにチャレンジし、新たな可能性を追求し続けております。>

「ウオーター グリーンアップル」の場合、最後の「おいしい」は、まだビミョーな気がするのだが、砂糖・甘味料不使用で、果汁にこだわり、添加物も使っていないところをみると、「自然」「健康」「安全」というコンセプトに沿って開発がなされたものであると考えられる。

ちょっとビミョーナ味の「ウオーター グリーンアップル」は、既存の「フレーバーウォーター」とは異なる、「低果汁ウォーター」ともいうべき道なき道を歩み始め、イノベーションを起こそうとしているのだろう。筆者としてはエールを贈りたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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