スタバの変化と上場リスク

2008.12.22

経営・マネジメント

スタバの変化と上場リスク

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

スターバックスの問題についての金森氏の指摘を参考に、飲食業の上場リスクとスタバの現状について、さらに議論を深めてみたい。なぜ、スタバは「らしさ」を失い変わってしまったのだろうか。

そして、新たな疑問が浮かんできた。
なぜ営業利益が激減したのか

改めて決算短信、中間決算説明会資料を見てとても不思議なことに気づいた。売上高は前年対比7.4%増である(09年3月期の第二四半期累計期間/08年3月期中間会計期間)。売上総利益も5.0%のプラス、でありながら営業利益は-27.2%。セオリー通りに解釈するなら、販管費が大きくふくらんだということになる。

その理由として、第二四半期決算短信には次のような説明があった。「既存店売上高の減少により販管費が1.2ポイント増となった」からだと。前期の決算短信をみれば、販管費として計上されている費目は広告宣伝費、貸倒引当金繰入額、給与手当及び賞与、賞与引当金繰入額、退職給付費用、役員退職慰労引当金繰入額、備品・消耗品費、不動産賃借料、支払ロイヤリティーなど。

今年度の販管費細目がわからないので確かなことはいえないが、販管費引き上げの要因として考えられるのは、人件費ぐらいしかない。もしかしたら広告宣伝費とロイヤリティーが上がった可能性もあり得るが、スタバの広告が増えたという印象は受けないし、いくら親会社の経営が苦しくなったからといってロイヤリティーを急に上げるというのはないだろう。結局、なぜ今年度の営業利益が大きく減ったのかは謎である(今年度の決算短信が出れば、ある程度のことがわかるかもしれない)。

飲食業の上場リスク

それよりもスタバが変わってしまった原因として考えられるのは、やはり上場による成長圧力ではないのだろうか。はてブコメントの中にはスタバの株主は米スタバが40%、サザビーリーグが40%だから「株主からの成長圧力はないのでは」という指摘があった。しかし、米スタバが40%というのがくせ者だろう。

再び金森氏の記事に戻れば、本社との契約が指摘されている。出店数は米本社から目標設定されており、目標を下回った場合はペナルティーが科せられる契約となっている。米スタバには米国の株主からの成長圧力がかかる。すると日本スタバの大株主である米スタバが圧力をかけてくるのは当然だ。

その結果、日本のスタバは無理にでも出店し続けなければならない。出店ペースが落ちた場合は、既存店売上高を少しでも上げなければならない。飲食店の場合は、席数が売上高に直接影響する。売上を上げるためには客数を増やすか、客単価を上げるしかないのだ。だから当初のスタバが考えていた立地条件以外のところにもどんどん出店し、店内スペースはできるだけ効率的に使う。さらに少しでも客単価を上げるためにいろんなメニューを増やしていく。

次のページ変化してしまったスタバ

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

竹林 篤実

コミュニケーション研究所 代表

フォロー フォローして竹林 篤実の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。