保険と類似商品を取扱う共済事業が揺れている。「共済」とは、簡単に言えば特定の組合員を対象とした生損保事業と言えるが、その加入者数は9000万人に近いと言われ、保険会社にはないユニークな商品、保険会社と比較して圧倒的に安い掛金(保険会社でいう保険料)と、高い割戻金(保険会社でいう配当金)などをアピールし、保険会社が業績に伸び悩む中、継続的に成長を遂げてきた。
そもそも小所帯の事業者に対して規制のハードルが高すぎるのではないかなど、当局側にも問題はあるのではないかと思われる。事業登録を行い事業開始に至るまでの当局折衝は、筆者の知る範囲においては最低半年以上かかっているのが実情のようである。ミニ保険会社の最低資本金は1000万円であるが、そのレベルの規模の会社では、当局折衝期間分の固定費のインパクトもばかにならない。
廃業する無認可共済は2009年3月末までに他の保険会社等へ契約を譲渡することになるが、行政が把握していない無認可共済が数多く存在すると見られ、契約者保護が十分に図られるかどうか大きな懸念がある。
一方で、行政が監督し、根拠法のある認可共済は安心だろうか? 筆者は認可共済においても油断できないと考える。
認可共済はそれぞれ監督省庁が異なり、個別の法律の適用を受けている。ただ、一般の保険会社が金融庁から受けている規制や制度に比べると、全体的に緩いものであり、情報開示規制や外部監査の必要がなかったりする場合があるため、経営の実態が把握できないこともある。また、共済金の将来の支払いに備える責任準備金の積立に関する制度も不十分である。実際、認可共済においても、四日市商工共済や佐賀商工共済など、経営破綻し掛金が1円も戻ってこなかった例もあるのだ。「うちは金融機関ではなく公的機関なので安心ですよ・・・」というセールストークは頭から信じてはいけないのだ。
保険業界では現在保険金不払いが社会的問題となっているが、加入者数が膨大な共済だけに、何か問題があった場合のインパクトは不払い問題よりも大きくなる可能性もあるのではないか。経営の透明度の低い共済事業において、社会保険庁のような失態がないことを切に望むものである。
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2009.10.27
2008.09.26
片出 剛
有限会社 アクト・パートナーズ 取締役
はじめまして。 有限会社アクト・パートナーズの片出と申します。 私はこれまで保険会社を中心とした金融関係の仕事をして参りました。それらの経験等を通じて得た様々な情報を、楽しく分かりやすく発信できればと考えております。 よろしくお願いします。