M&Aが上場企業の今年度の決算に及ぼす重要な影響について

2008.11.28

経営・マネジメント

M&Aが上場企業の今年度の決算に及ぼす重要な影響について

佐武 伸
株式会社サンベルトパートナーズ 代表取締役

米国発のサブプライム問題は、上場企業の来年3月決算に相当影響を及ぼしそうな気配になってきました。その影響は、円高に伴う輸出の減少等本業の業績悪化だけでなく、株価下落に伴う有価証券、地価下落と稼働率低下に伴う固定資産の減損処理を通じて上場企業の決算に多大な影響を及ぼすことが予想されます。

特に注目されそうなのが、ここ最近積極的にM&Aを進めてきた上場企業による「のれん代」の減損処理に伴う特別損失の計上です。サブプライム問題発生までのこの5年間を振り返りますと、事業会社だけでなくバイアウトファンドの台頭によって買収希望者が急増し、買収競争が厳しくなったことから相当高値によるM&Aが行われてきました。したがって、連結バランスシート上、高額なのれん代の計上が行われてきています。そののれん代の減損処理が株価下落、業績の悪化等に伴って連結財務諸表上減損処理を強制される可能性が高くなってきているのです。

会計上、他社を買収して子会社化した場合、親会社の単独決算上では、買収金額(取得金額)で貸借対照表に計上します。その後、子会社株式の実質価値が半値以下に下落して場合、親会社の単独決算で減損処理し、特別損失に計上されます。一方、連結決算では、買収時に買収価格と子会社の純資産との差額を「のれん代」に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却を行い、そのうえで減損会計をあわせて適用します。

最近のニュースによりますと第一三共が過去に買収したインドの製薬会社の株価下落に伴い、減損処理が避けられず、来年3月決算に初の最終赤字に陥る可能性があると発表しました。また、イオンも米国の医療販売子会社の減損処理で190億円規模の特別損失が発生すると公表しています。

以上のようにサブプライム問題の世界への飛び火の影響は、金融機関だけでなく他の上場企業の今年度決算に思わぬ形で多大な影響を及ぼす可能性が心配されます。

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佐武 伸

佐武 伸

株式会社サンベルトパートナーズ 代表取締役

中小企業M&Aの専門会社です。仲介業、財務調査、企業価値算定等のサービスを完全成功報酬体系でワンストップで提供させていただきます。 URL: http://www.sunbeltpartners.co.jp/

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