大相撲の経済学(2)競争制限的な仕組み

2008.09.12

ライフ・ソーシャル

大相撲の経済学(2)競争制限的な仕組み

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

大相撲界は、一つの大きな会社組織のようなもの。 別の言い方をすれば、「運命共同体」です。

現役の力士たちは、
より高い番付や、場所優勝を目指して、
お互いに競い合っているものの、

「真の敵」

ではありません。

むしろ、大相撲という

「興行」(=娯楽サービス)

を共に盛り上げる仲間。だから、
同じ会社の「社員」という見方ができるわけですね。

さて、大相撲界では、力士や部屋単位ではなく、
全体の繁栄・存続を大前提とする

「巧妙な仕組み」

が長い年月を経てできあがっています。

この点は、同じ「興行」でありながら、
特定の球団の繁栄が優先され、業界全体の地盤沈下が著しい
プロ野球界がぜひ学んで欲しいところです・・・

おっと脱線しましたが、
前述の「巧妙な仕組み」に戻りましょう。

巧妙な仕組みの多くは、

‘競争制限的’

なものです。

例えば、相撲は「個人競技」ですが、
全力士が、他の全力士と戦うことができる

「個人総当り制」

ではありません。

同じ部屋に属する力士同士は、
本場所の土俵上では戦わない決まりです。
(優勝決定戦を除いて)

つまり、本場所の取組は、
他の部屋の力士の間でしか組まれないのです。

これは、

部屋別総当り制」

と呼ばれ、昭和40年から続いているそうです。

当然ながら、

「部屋別総当り制」

だと、

「個人総当り制」

よりも「取組」の多様性が低くなります。

例えば、同じ高砂部屋の

‘朝青龍’(西横綱)と‘朝赤龍’(西小結)

の取組が見たいと願っても、

「優勝決定戦」

にならない限り実現することはありません。

ですから、以前より「個人総当り制」を
望むファンの根強い声があります。

しかし、今後も「個人総当り制」に
変更される可能性はほとんどないでしょう。

なぜなら、より多くの白星を取れたり、
優勝を狙える力士をたくさん抱えている部屋ほど、
相撲協会からの補助金がたくさんもらえるためです。

ですから、もし「個人総当り制」になってしまうと、
強い力士をたくさん育成することよりも、むしろ、
同じ部屋の力士同士の取組の場合に、どちらを勝たせるべきか
といった所属力士の白星・黒星の配分に気をつかうことになる
でしょう。

仮に、個人総当り制となったとして、
もし自分の部屋のある力士があと1勝で優勝するという取組で、
同じ部屋の他の力士と戦うことになったとします。

この場合、親方としては、当然ながら優勝しそうな力士を
勝たせたいでしょう。(そのほうが補助金が多くなる)

そうすると裏取引、
すなわち「八百長」が行われるかもしれませんよね。

結局のところ、大相撲は、
「個人別競技」でありながらその実体は、

次のページ「部屋同士の戦い」

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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