50億人市場で日本が生き残るには

2008.09.09

仕事術

50億人市場で日本が生き残るには

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

面積わずかに4000平方キロメートル、といえば日本のわずかに0.1%。その土地に暮らす人口は120万人しかいない。しかし、この国の一人当たりGDPはいま、日本を追い越そうとしている。

『日本ブランド』は大丈夫なのか?

かつてのような威光は薄れつつあるとはいえ、まだまだ「Made in Japan」ブランドは健在だ。幸運なことに日本ブランドのまがい物を中国がせっせと作ってくれるおかげで、日本ブランドの品質に対する認識については、かなり下駄を履かせてもらってもいる。だからこそ依然として安心と信頼のブランドなのだ。

ところが、その安心・信頼が揺らぎつつある。ここ2?3年の間に日本企業がやらかしてきたことを少し振りかえってみれば、少なくとも日本国内に暮らす私たちにとっては日本ブランドが決して万全ではないことが生活実感としてある。たとえば自動車のリコール隠しに始まり、マンション偽装、建材偽装、食品偽装、教員偽装ときてトドメはついに毒入食品の偽装販売にまで行き着いた。

メタミドボス入りの米を偽って売りさばく。こんなことが起こるようでは毒入りギョーザで問題となった中国と同じレベルではないか。

実体+イメージで日本ブランドの啓蒙を

言うまでもなく、日本はこれからも輸出で生き延びていかなければならない。質の高い商品を輸出し、外貨を稼ぎ、エネルギー、食料、資源を輸入する。このサイクルを回し続けることができなければ、エネルギーと食料が枯渇する。そのためには日本ブランドに対する信頼が落ちる前に、何とかして維持し、より高めるための手だてを打つことが必要だ。

と同時に日本ブランドに対する啓蒙を図ることも求められるのではないだろうか。「Trade follow the film」という言葉がある。戦後の日本が奇跡的な復興を遂げた大きな要因は、アメリカのテレビ番組を洪水のように日本人に見せ、豊かな消費生活への憧れを喚起したことにあるという考え方を示すことばだ。

実際、戦後日本のテレビ放映方式を決めるときに、ヨーロッパ規格とアメリカ規格のどちらを採用するかで激論が交わされた。将来的な汎用性を考えれば技術的にはヨーロッパ規格が有利だったが、アメリカ規格を強硬に主張する人物がいた。最終的にはその人物の思惑通りにことが運び、おかげで日本はアメリカのテレビドラマを大量に輸入して放映することができた(もし、ヨーロッパ規格が採用されていたら、日本ではまともなテレビ番組を当分の間、見ることはできなかっただろう。何しろ自前のコンテンツがほとんどなかったのだから)。

その人物とは正力松太郎である。彼は日本人のモチベーションアップのためには、アメリカの豊かな暮らしぶりをこれでもかというぐらいに見せることが、もっとも手っ取り早いと考えた。映像とそのイメージが人に与える影響力の強さを正力氏は知っていたのだろう。

であるなら、ここにも日本のチャンスはある。日本のドラマは韓国をはじめアジア各国で人気である。歴史に倣えばアジアマーケットの中核となりそうな国で正力松太郎氏のような人物を養成し、一方では日本製品に対する安心感、信頼感を育むような番組を送り込む。これは一放送局にできることではなく、国家的な戦略として展開すべき規模の啓蒙策である。

それぐらいのビジョンを描いてくれる政党、政治家がリーダーとなってくれることを祈るばかりだ。

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