『崖の上のポニョ』の大成功にマーケティングの整合を見る

2008.08.20

営業・マーケティング

『崖の上のポニョ』の大成功にマーケティングの整合を見る

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

「公開から31日で100億円を突破!」が報じられたポニョ。歴代宮崎アニメの中でも大ヒットとして間違いないだろう。前作・ハウル以来4年ぶり。宮崎監督都が熱いハートで取り組んだ作品に対し、マーケティング的評論をするのも憚られるが、その成功のヒミツを少しだけ読み解いてみたいと思う。

その意味からすると、外部環境との整合もいい。
子供をメインとして、親子で楽しむ作品の公開時期としては、夏休みはベストだ。ロングランを期待するにしても、立ち上がりで動員数を大きく稼ぐことができる。
時期だけではなく、昨今のシネコンの隆盛も追い風だ。館内がきれいで、事前に座席を取ることもでき、背の低い子供向けの補助シートなども整備されている。既にシネコンは過当競争に入っているので、サービスが非常によい。小さな子供を連れて行くのにはベストな環境である。
昨今の経済環境にも適合している。物価高にあえぐ今日の消費生活において、夏のレジャーは「近間で済ます」傾向が顕著であった。レジャーとして映画に流れた部分も大きかっただろう。

外部環境の機会を捉え、ターゲットに最適なポジショニングの優れた作品を提供できていることがここまででわかるが、4Pの残る要素もうまく整合している。
「価格(Price)」「チャネル・販路(Place)」「プロモーション(Promotion)」も、ここまでの要素と関連している。
価格は、昨今、実に定価で映画を観る層は少なくなっている。話題の映画であれば前売りを入手するのは昔から変わらないが、前述の通り、過当競争機にあるシネコンは、各種の独自の割引プログラムを用意している。また、映画業界全体での割引サービスもある。つまり、いつの間にか、定価・大人1800円は変わらないのだが、平均価格はずいぶんと安くなっているのだ。
チャネル・販路は外部環境で触れたとおり、シネコンが大きく寄与し、利用しやすくなっている。ターゲットとの適合もいい。
プロモーションは、今回実にうまく計算されていたと言えるだろう。映画ファンということもあり、筆者は映画情報には比較的耳の早いほうと自認しているが、「ポニョ」の作品内容、ストーリーなどは全く事前に漏れてこなかった。一般にもあの「ポーニョ ポニョ ポニョ さかなの子・・・」のテーマソング以外、「どうやら子供向けのファンタジーらしい」ということしか公開されていなかった。つまり、一種の「ティザー(teaser:じらし)広告」として事前の盛り上げに大きく寄与していたのは間違いない。

以上のように、「崖の上のポニョ」は、成功すべくして成功しているのだとわかる。
アニメーションはもはや芸術であるが、ビジネスでもある以上、成功法則を踏襲することも、また重要だ。宮崎アニメのような、製品(作品)の完成度が大きな地位を占める場合でもそれは同じだと言えるだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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