ブランド 【4】

2008.08.01

営業・マーケティング

ブランド 【4】

猪熊 篤史

企業や製品・サービスの個性について引き続き考えてみたい。【最終回】

ブランドの第1の階層を積み重ね、第2の階層が形成されると自ずと業界(市場)における位置づけや対象となる顧客(顧客層)がある程度固まってくる。業界における売上規模や利益の大きさ、製品価値の評価における序列、ビジネス界における発言力などがある程度決まるってくる。ブランドの製品・サービスを使用した人々の評価が固まると、そのブランドの愛用者や信奉者も特定できるようになる。ブランドと結び付けられるユーザーの特徴(年齢、性別、キャラクター、ライフスタイルなど)が客観的に説明できるようになる。広告宣伝に起用されるタレントなどもそのようなブランドの特徴との適合によって選ばれる。また、ブランドの評価自体が広告宣伝で起用されるタレントなどの日常生活の影響を受けたりする。

第3の階層は、第1の階層の深層に形成される第2の階層にある高密度のエネルギーが第1の階層の表層から放出してできる大気層のようなものである。それに触れてその存在を体感することはできない。しかし、ブランドを使用する我々は、このような第3の階層に包まれてブランドを使用することになる。

第3の階層を構成するのは、イメージであり、ブランド名など言葉の響き(共鳴)であり、製品やサービスの価値変化の方向性、あるいは、期待である。

我々は、製品やサービスを評価する時に、自分自身の経験や知識によって構築されたデータベースを検索して、過去のデータとの整合性や類似性によって製品やサービスを評価する。適切に評価する場合も多いが、誤って評価することもある。

自分の直接構築したデータベースにデータがなければ、人類の「英知のデータベース」と交信して、製品やサービスについての判断材料を入手しようとする。

それは「空気を読む」ような作業である。データーが直接信号として送られてくるものではない。ここでも適切な判断や推測が行われる場合もあるし、誤った判断や推測が行われる場合もある。

ブランドが確立すると、ブランドに対する基本的な好き嫌いなど、評価の基軸が形成され、ブランドについてのデータ検索作業において我々が誤った判断をすることが少なくなる。

自分にとって好ましいものは、好ましいものとして判断されるし、好ましくないものは好ましくないものとして適切に判断される。

ブランドが一般に認知されるということは、ブランドに対する好ましい評価が一定量以上あることを意味する。

認知されたブランド(確立したブランド)は、消費者が製品の検索や評価にか費やす直接的・間接的な費用を軽減する。また、ブランド提供者(メーカーなど)が業者との取引きにおいて負担する諸々の付帯コストは、ブランドの構築や維持によって軽減される。

ブランドとは、製品やサービスの名称やシンボルなどであると同時に、その製品やサービスの基本形(コミュニケーションの部分も含めた製品やサービスそのもの)であり、製品やサービスの歴史であり、また、製品やサービスの価値変化や消費者のニーズ充足に対する期待や信頼である。

【V.スピリット No.91より】

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