2兆円の米国SEM市場を支えるグーグルの存在

2008.07.30

営業・マーケティング

2兆円の米国SEM市場を支えるグーグルの存在

泉 浩人

最新の予測によると、米国のネット広告の中で最大のシェアを占める検索連動型広告市場規模は、2007年の約1兆円から、2013年には2兆円を超える水準まで、今後も引続き、高い成長を持続すると見られています。米国の広告市場規模を考えれば、マクロ的には充分に実現可能な数字だと思いますが、一方で、この2兆円を、誰がどうやって捻出(=マネタイズ)するのか、という観点から見ると、そこには不安材料も見え隠れしてきます。

6/30に米国のJupiter Research社が発表した予測によると、サブプライム問題などによる景気後退にもかかわらず、米国のネット広告市場は、今年も前年比で20%と、引続き高い成長が見込まれるそうです。

検索連動型広告の市場規模は、2007年の91億ドル(約1兆円)から、2013年には209億ドル(約2兆3,000億円)に到達すると見られており、検索は、今後もネットにおける最大の「広告媒体」として、成長の牽引役になると見られています。

もっとも、テレビや新聞などオフラインも含めた米国の広告市場は全体で約30兆円(日本は約7兆円)ですから、検索連動型広告の市場規模が2兆円を超えても、それ自体は、それほど驚くべき数字ではないでしょう。

むしろ気になるのは、この2兆円を誰がどうやって「マネタイズ」するか、という点です。

先日、マイクロソフトによる買収提案を拒絶した米ヤフーは、グーグルと提携してアドワーズ広告の配信を受けると発表しました。「提携」というと聞こえは良いですが、これは、検索連動型広告のパイオニアであるオーバーチュアを傘下に持ち、本来は広告の「配信元」であるはずのヤフーが、配信を受ける「ネットワーク」の1社に成り下がってでも、糊口をしのがざるを得ないほど苦しい状況にあることを示している、と見るべきでしょう。

ちなみに、検索連動型広告の売上高というのは、簡単にいうと、

「検索のトラフィック数」x「1検索あたりの平均広告収入」

という算式で計算されます。(「1検索あたりの平均広告収入」は、平均クリック単価やクリック率などによって決まります。)

既に米国の検索市場では、年々グーグルによる寡占状態が進行しつつあり、グーグルの成長が、米国における「検索のトラフィック数」全体の伸びにも大きな影響を与えるようになっています。そこに、今回の「提携」で、米国第2の検索エンジンであるヤフーの「1検索あたりの平均広告収入」についても、グーグルが、今後、いかに多くの広告主を獲得し、1検索あたりの広告収入を改善できるかに大きく依存することになります。

ちなみにグーグルの2008年第1四半期の売上高は51億ドル(約5,600億円)で、そのうち米国からの売上は49%とされています。これを単純に4倍すると、今年のグーグルの米国での売上は約1兆円になる計算です。米国の検索連動型広告市場が、予測通り、本当に2兆円市場に到達できるかどうかは、実は、ほぼ唯一の「頼みの綱」になりつつある、グーグルの成長いかんにかかっているといっても過言ではないでしょう。

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