使い切り「エコデジカメ」は誰がために?

2008.07.08

営業・マーケティング

使い切り「エコデジカメ」は誰がために?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

昨今、環境に配慮した製品を総称して「エコプロダクツ」と呼び、各企業が独自に基準を定めたり、企業が集い、展示会を開いたりするという動きが活発である。そんな中で、ちょっとビミョーな製品が登場した。

さて、3と4のターゲットに対して、どのように魅力的なポジションを示すのだろうか。
<撮り終えたデジカメはプラザクリエイトの店に持ち込み一枚37円でプリントする>とのことなので、この製品は基本的に「プリントすること」を前提とした商品だ。データも手に入れることはできるが<焼き増し用の画像データもCDでもらえる>とのことなので、「データだけ」というのはNGなようだ。とすると、基本的にデータだけで通常済ませる人からは、ちょっと魅力に欠ける商品になってしまわないだろうか。前述の3の携帯カメラユーザーは滅多にプリントしない。プリント主体だと、よほど改まった利用シーンでしか使われないように思う。すると、「特別なシーンで、気軽にデジカメ写真撮影ができて、きれいなプリントができる」というような打ち出し方になるのだろうか。
「写ルンです」ユーザーはどうだろうか。プリント一枚37円。焼き増し用CD別料金だと、既存の「写ルンです」を使ってプリントし、データ化してもらうのとほとんど料金は変わらない。だとすると、そのまま慣れた写ルンですを使った方がユーザーは楽だろう。あえて、それを代替させるなら「写ルンですはもう古い。デジカメでもっときれいな撮影を」という訴求を行うのだろうか。

「特別なシーンで、気軽にデジカメ写真撮影ができて、きれいなプリントができる」「写ルンですはもう古い」・・・こんなポジショニングだとしたら、すごくニッチな商品になってしまう気がする。

写真を撮るという習慣は、昨今、デジカメの普及によって、大きく変質している。フィルム代がいらなくなったことから、撮影数は爆発的に増えているが、プリント数が激減しているのだ。写真屋に出さないだけではなく、家のプリンタで出力もしない。デジカメや携帯のメディアの容量が2GB以上にもにもなっていることから、そこに延々とため込む。そして大型化している液晶画面で撮影した画像を見るというような使い方が主流になってきているのだ。カメラとアルバムがドッキングしたものを持ち歩いているような状態である。
これは、プリントを生業とする企業には危機的状況だ。是が非でも、プリントしてくれるような機会を創出したいという思いが強いだろう。
だとすると、前述の携帯カメラと写ルンですユーザーだけでも、「気軽なデジカメ」というポジショニングでプリントする習慣を創出したり、残したりしようという意図だと考えられる。メインストリームにはなりえなくとも、ニッチでも、プリントという機会を残すことがこの「エコデジカメ」の使命なのだろう。だとすれば、ターゲットとポジションも納得がいく。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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