マクドナルドに飲み込まれるカフェ市場?

2008.07.02

営業・マーケティング

マクドナルドに飲み込まれるカフェ市場?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

マクドナルドの怒濤の攻勢が止まらない。カフェ市場はその強大なパワーの前に飲み込まれてしまうのだろうか?

さて、「マクドナルドに飲み込まれるカフェ市場」とタイトルを付けたが、過去の記事でも記したように、スタバ、加えてタリーズといった「シアトル系コーヒー」のカフェは、やはり味の好みはあるものの、価格攻勢では影響を受けざるを得ない。
加えて、前述のような店内改装が加速すると、その差異は一層縮まることになる。シアトル系に限ったことではない。カフェは、ドリンクやフードを提供しているものだけではない。「空間」も商品のうちだ。残念ながら、スタバは少々狭い店舗が多くなってしまった。
ドトール、ヴェローチェなどの低価格カフェはもとより狭い詰め込み型だ。一人席の使い勝手などは改装したマック店舗の方が良い。

とはいえ、マックといえば、やはりハンバーガーやポテトがフードのメインというイメージは払拭しがたい。これまでにも、おやつタイムを狙って、100円フードとドリンクをセットで150円という価格で提供していたが、イマイチ魅力に欠けていたのも事実だ。ちょっと小腹が減ったときなどは炊きたてパンのイートインサービスのあるカフェに行ってしまう。
それを阻むものとして、マックカフェがあったのだが、それに代替するベーカリーメニューが今度は全店で展開されるのだ。

コーヒー、フード、店内空間と、今までのウィークポイントを確実に克服しているマクドナルドは、やはりカフェ市場にとって大きな脅威であろう。

そして、マクドナルドの最大の脅威は、やはり何といっても「価格」である。顧客に低価格で提供しつつ、コストを低減し、しっかり稼げる構造を築いている。そこには同社の強大な「規模の経済」が存在している。その「コスト・リーダー」としてのポジションを覆せるプレイヤーは、まず登場することはないだろう。
景気が低迷をはじめ、世の中、値上げラッシュだ。消費者の生活防衛意識は高まり、財布の紐も固くなる。マクドナルドの低価格路線は、このタイミングでは最大の威力を発揮することになるのは間違いない。

では、他のカフェはマクドナルドの攻勢の前に為す術がないのか。そうではない。各社が原点回帰をし、自分の強みを最大化すべきなのだ。
例えば、この度のマックのベーカリーメニューは、<パンは店舗で温めて客に出すようにし、「焼きたて感」を強調する>という提供方法だ。
NIKKEI NET http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080701AT3K0100H01072008.html
あくまで「焼きたて感」。焼きたてではない。では、焼きたてパンのイートインの店は、極力細かなタイミングでパンを焼き、焼きたてを提供するという対抗策があるだろう。
スタバも、これは何度も書いているが、是非とも店内空間は充実させて欲しいが、それよりも、従業員の顧客応対を再度強化してはどうか。マクドナルドも優秀な接客マニュアルがあるが、スタバも従業員のモチベーション施策や、応対からコーヒーの淹れ方まで、様々なノウハウが蓄積されている。まずはそこから徹底してはどうだろう。

時流に乗ったコスト・リーダーの攻勢は凄まじい力を持つ。「どうしてもスタバでなけりゃ」というコアなファン(筆者もその一人なのだが)以外は軒並み持って行かれることもあり得る。黙っていれば飲み込まれる。
飲み込まれないために必要なのは、正しい脅威の認識と、前述の通り、原点に回帰した対抗策を徹底することだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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