「騙し絵」と「ビジョン」の不思議な関係

2008.05.06

経営・マネジメント

「騙し絵」と「ビジョン」の不思議な関係

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

戦略策定に際して、外部環境を客観的に分析することは非常に重要です。でも、客観なんて本当にあるんでしょうか?私は、外部環境分析のお話しをする時には、必ず騙し絵とビジョンの不思議な関係について説明します。

そして、今期のリソースの投入と、活動はどうだったのかを考え、来期の計画、つまりアクションを考えます。

繰り返しになりますが、「全体として見たいもの」、を規定しないと意味合いというものは、出てきません。

その全体として見たいもの、というのが、企業の長期的な意思、ビジョンですね。

ビジョンが無いと、ファクトの評価ができません。ファクトの意味合いがわからなくなります。

もし、企業体に属する個々人が、全く違うビジョンを見ていたら、同じファクトを見ても、反応が違ってしまうんですね。あまり組織としての力を発揮できないことになります。

企業の意思は、当然、経営陣が明確化すべきものです。そのビジョンに呼応して、従業員は集まってくる、日々の活動に意味合いを見出していくものですからね。

経営者が、方針をコロコロ変えると、メンタルヘルス的には非常に悪いことがわかりますよね?老婆と貴婦人の例で言えば、ある時に老婆の目に見えているものが、突如、貴婦人の耳だ、ということになるわけです。

この例ではわかりやすく2つの全体像しか提示していませんが、全体像がいくつもあったとします。従業員は、各部分を見ていることになりますが、あるときは、Aという全体像で見ることを求められ、あるときはB、またあるときはC、Dとなれば、目の前の事実の意味合いが本当にめまぐるしく変わります。

目の前のものの見え方がころころと変わってしまうのは、「ゲシュタルトが揺らぐこと」になるんです。ある意味で、心の病の状態に近くなってしまうんですね。(このあたりのことの解説はまた別の機会に書かせていただきます。)

だから、企業のビジョンは設定したら、それに基づいて経営することが大事になります。

オーナー企業で、コロコロと方針が変わる企業は、離職率が高かったりしませんか?あるいは、方針をコロコロ変える上司の部門でも、そうだと思います。

確かに、強くて明確なビジョンは、なかなか簡単にはできません。

しかし、ビジョンがなければ、外部環境をいくら分析しても、その意味合いというのは、出てこないんですね。ファクトを集めても、分析の視点がなくなってしまう。意味合いが規定できない。つまりはアクションに結びつかない。

単にファクトを集めても、アクションに結びつかなければ、そのリサーチは無駄ですよね?

こんな価値をこんな顧客に対して提供して行くことで、社会を、世界をこうして変えて行きたい、ということをしっかりビジョンとして規定する。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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