身体は口ほどにものを言う

2008.04.26

組織・人材

身体は口ほどにものを言う

横井 真人
産業能率大学 教授

自分はできているつもりでも、周りから見ると全然だめだってことありますよね。相手にメッセージを伝えるためには、やはり言葉だけでは足りないようです。

今年も新人研修の時期がやってきて、過ぎ去ろうとしています。
何百名かの新人君達と接して感じたこと。
それは普遍的な物事ほど実は新たな気づきを本人にもたらすということでした。
弊社の新人向けプログラムの一つに怒らせてしまった相手に
どう対応するかを体感するワークがあります。
新人同士でも結構迫真の演技を見せてくれます。

「いやあ、演技だと分かっていても、怒られるとびびりますね」
「済みませんでしたと言うだけで精一杯ですよ」
「予想外の発言が出ると頭が真っ白になってしまいます」
「相手役をするとどういう対応はよくて、
どういうのが火に油を注ぐかがよくわかりますね」

と、いうような感想が一般的ですが、こんなのもあります。
「お詫びのお辞儀の深さと長さで印象が変わりますね」
「表情が悲しそうでないと本当に悪いと思っているのかと思います」
「声に切実感がなかったです」
「目線が泳ぐと誠実に思えません」
「身体の向きが正面を向いてないと逃げてるように思えます」
と、結構手厳しいものもあります。

コミュニケーションの93%が非言語の印象だという
メラビアンの説は有名ですが、
たしかに「言葉」以上の要素が大事なように思えます。
彼らの気づきはある意味全て「当たり前」の話ですが、改めて
実感する経緯が見ていても新鮮でした。

前出の表情が悲しそうでないと言われてしまったA君が後で相談に来ました。
「自分は一生懸命謝っているのに相手には伝わりませんでした、ショックでした」とA君。
「そうだね、あなたの場合は情緒的表現性
(どれだけ感情を伝えようとしているかの意識度合いを測定する項目)
が低いから感情を表してはいけないと意識が元々あるからね」と私。

「そうなんです。確かにそういう部分はあります」

「でもあなたが時折見せる笑顔はいい顔だと思うよ」

「そうですか・・・。実は、笑顔は就職活動中に必死で訓練したんです」

「そうだったんだ。じゃ悲しみは?」

「ムリですよ。絶対見せたくないですから」

そうか、そういう意識構造だったんだ。
これまでの人生の中で表情筋も神経の伝達経路も
発達しなかったのかも知れません。
それでは悲しい顔をするなんてできませんわな、と妙に納得をしました。

「でも謝る時は相手に迷惑をかけて反省している、
迷惑をかけて申し訳ない、悲しいという気持ちが伝わらないよね、
冷静でいること、感情的な動揺を見せないことも大事だけど、
感情の表し方も一つの方便であり、大事なスキルだからね」と、私。

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横井 真人

横井 真人

産業能率大学 教授

個人と組織のパフォーマンス向上を研究。人の行動をスキル、知識、行動意識、感情能力、価値観等の要素に分解し、どの要素が行動に影響を与えているかの観点からパフォーマンスを分析。職場のコミュ二ケーション、リーダーシップ、チームビルディング、ファシリテーション、ソリューション営業、マーケティング等の具体的施策に視点を活用する。

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