社会人時代に起きた出来事-2

2026.01.21

経営・マネジメント

社会人時代に起きた出来事-2

野町 直弘
調達購買コンサルタント

今回は回顧録(?)の続きです。

今回は、昨年末に投稿した「社会人時代に起きた出来事」の続編です。

前回はインターネットバブルとその崩壊までを書きましたが、その後、私は2002年にアジルアソシエイツを起業し、15年間、会社経営に携わってきました。

会社設立当初の業績は、事前の想定以上に順調に推移していました。背景にはインターネットを活用したIT化の進展があり、調達購買業務にもe調達が広がっていたためです。

リバースオークション、Web-EDI、カタログ購買などの導入が進み、それらを支援するプロジェクトのニーズが増加しました。同時に、自動車業界や電機業界を中心に、調達購買業務そのものを変革しようという潮流も生まれていました。

さらに、当時は調達購買に特化したコンサルタントが少なく、私たちは事業会社での実務経験や改革経験を背景に専門性を確立していたことから、さまざまな企業から案件をいただくことができました。

また、ある企業がB2Bツールおよび調達BPO事業を展開しようとしており、その企業と全面的にタイアップしたことで、事業はさらに拡大。最盛期には15名もの社員を抱えるまでに成長しました。

振り返ると、この時期はまさに“インターネットによる調達購買業務改革の時代”でした。バブルではなく、インターネットを活用した業務改革が着実に進み、そのトレンドを的確に捉えることで会社の成長につなげることができたのです。

しかし、その流れを一変させたのが「リーマンショック」でした。

リーマンショックは2008年9月、米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻を契機に世界規模で広がった金融危機・経済不況です。日本ではやや遅れて2009年頃から影響が顕在化しました。

大口案件が急激に減少し、さらに私自身もそれまでのハードワークで体調を崩し、3カ月間の入院を余儀なくされました。会社経営は一気に厳しさを増しました。

特に印象に残っているのは、大口顧客を訪問した時のことです。その顧客への売上依存度は知らぬ間に高まっており、もしその案件が途絶えれば経営は深刻な状況に陥ります。案の定、リーマンショックの影響で新規案件は止まり、私は自社の状況を説明し、支援をお願いしに伺いました。

正直に言うと、藁にもすがる思いでした。

幸い、私たちの専門性は高く評価され、他社との競争力にも自信はありました。しかし、相手企業の経営状況も厳しく、支援のお願いはあっさりと断られてしまいました。

今思えば当然なのですが、共に歩んできた“同士”だと思っていた企業に、最終的には目先の収益を優先され、強い悔しさが残った出来事でした。

その後、リーマンショックの影響が徐々に和らぐにつれ、経営状況は少しずつ回復していきました。そして、次に起きた出来事は、今でも忘れられないものです。

「東日本大震災」です。

2011年3月11日金曜日。当日、私は半蔵門の貸会議室で調達購買基礎研修の講師を務めていました。受講者は11名ほどだったと記憶しています。

地震発生後、パトカーや消防車、救急車のサイレンがひっきりなしに響きました。それでも受講者全員から「研修を続けてほしい」と言われ、最後まで実施しました。交通機関はすべて止まり、私は赤坂のオフィスまで歩いて戻りました。受講者の中には遠方から来ていた方もいましたが、当日初めて会った別の受講者の家に泊めてもらうなどして、翌日か翌々日には無事に帰宅することができました。

休憩時間にはインターネットで被害状況を確認し、オフィスに戻ってからはテレビで津波の映像が流れていました。その後、日本企業は数カ月にわたり緊急避難体制に入りました。

東日本大震災で私が強く感じたのは、「圧倒的な無力感」と同時に、「日本企業のたくましさ」でした。

震災から2週間ほど経った頃、購買部門が当時どのような対応や苦労をしていたのかを共有するため、関係者が集まって情報交換会を行いました。その内容をもとに坂口さん・牧野さんを中心に出版
されたのが『大震災のとき!企業の調達・購買部門はこう動いた』という本です。

この本には、大きな危機時に重要なのは「価値観の共有」であると書かれています。自社の生産や調達を止めないためだけではなく、会社内や部内、そしてサプライヤーとも価値観を共有しながら復旧に向かう——日本企業の優秀なバイヤーたちはまさにそれを実践していたのです。

本には、「圧倒的な無力感」と「日本企業のたくましさ」の両方が描かれています。

その後、私は会社を清算し、2017年に現在の会社へ合流しました。正確には、以前勤めていたコンサルティング会社に復職した形です。調達購買コンサルティングという仕事自体は変わっていません。
通算すると30年以上続けていますが、飽きない理由は、時代とともにテーマが変化していくからです。その中で、また大きな事案が起きました。

「新型コロナ」です。

新型コロナを特別視し過ぎるのは違和感がありますし、まだ記憶に新しいため一般的な変化にはここでは触れません。ただ、コロナによって社会が変わったことは事実です。

対面が主流だった会議やコンサルティングはWeb会議に置き換わり、価値観も大きく変化しました。特に「多様性の重視」は、コロナの大きな影響のひとつです。テレワークやフレックスタイムが普及し、多様な人材が活躍するための基盤となりました。同時にサステナビリティが重要視され、多様な人材の活用が共通認識となっていきました。

一方で、アフターコロナの現在は供給力不足が続き、売り手優位の時代が続いています。

そして現代で最も大きなインパクトのある出来事といえば、「生成AIの進化と活用」です。

生成AIは驚異的なスピードで進化し続けています。企業が業務にどう活用するかという視点はもちろんありますが、しばらくは“使える人が上手く使うテクノロジー”として定着していくと私は見ています。

若い世代はすでに、情報収集や多面的な意見の把握に生成AIを活用し始めています。今後は文章や資料作成の支援、言語の壁を超えたコミュニケーション支援などにも活用が広がるでしょう。

ただ、もう少し時間が経たないと具体的な活用方法は見えてこないでしょう。企業としてどのように活用するかはまだ明確ではありませんが、生成AIの進化はインターネットの進化と同様に、社会や企業活動に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。

2回にわたり、私の社会人生活で起きたインパクトの大きな出来事を、実体験をもとに紹介してきました。さまざまな出来事が起こり、それぞれに異なるインパクトがありました。

皆さんにとっても、「そういえばあの時は…」と振り返りや学びのきっかけになれば幸いです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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