サービスサイエンティストとして、サービスの本質的な理論を提唱し続ける松井さんとパナソニックで実際にCX・CSに向き合い、お客様へのサービスを提供されている今村さんをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。 (聞き手:猪口真)
猪口 AIがその知識を持っているからこそできるわけですね。
今村 かつ、私たちはお客様とリアルにコミュニケーションを重ねてきました。そこから得たナレッジと家電がつながることで、いろいろな価値観がどんどんアップデートされていく。ノウハウだけなら「提供型」になりますが、お客様との会話の中で一緒につくり上げるから、「共創型」でより進化していくのだと思います。
猪口 本当にそうですね。「料理をするから電子レンジがほしい」というのが今までのストーリーですが、「料理をしない」人にもソリューションとして提供するわけですから。
今村 「元々料理をしてきた人が、時短をしたい」というニーズから、「元々料理をしないけど、料理する必要が出てきた」へと変わってきて、「料理をするために」というハードルをまず超えないといけなくなった。「ヘルシーな料理が食べたい」「もう少し柔らかい調理にしてほしい」など、ニーズの進化とともにアドバイスも変わります。その変化に柔軟に合わせていくことは、くらしそのものなのです。
猪口 さらに多様化したソリューションが出てきそうですね。
今村 それに一生の間ずっと同じではなく、ある時期は新生児がいて、ある時期はスポーツをしている子どもがいて、またある時期は高齢の親がいるというように、家族のかたちも変化していきます。
猪口 モノでもサービスでも、どうしても提供側がマーケットを絞って、これ以上の知識がある人、こういう経験がある人というように、お客様を決めてしまいがちです。
今村 それは“変えられないハード”を売っているからです。“変えられるハード”はサービスとセットになっています。サービスによって機能を引き出し、お客様にフィットさせていくことができます。
猪口 パナソニックさんほどの企業となれば、社会課題への対応を使命としてお持ちだと思います。女性の社会進出や家族の幸せなど、さまざまなテーマがある中で、今後の「カジ育」の方向性はどのようにお考えですか。
今村 パナソニックの創業者である松下幸之助は、「物心一如の繁栄」という思想を持っていました。モノの豊かさと心の豊かさ、この両方の繁栄によってはじめて理想のくらしができあがる。それを250年かけて築いていこうと語っています。私たちは今、ちょうど100年を超えたところにいます。これまでの100年はモノを必死につくってきました。次の100年は、モノに加えて心を必死に豊かにしていきたい。モノと心が融合していくことで、真の物心一如の繁栄の世界がつくれられていく。それが、「企業は社会の公器である」という経緯理念を掲げてきたパナソニックの使命だと思っています。
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