ビジネスパーソンとしての実行力(2) 「モチベーションが持続しないから成果が上がらない」は大きな誤解

2025.10.16

経営・マネジメント

ビジネスパーソンとしての実行力(2) 「モチベーションが持続しないから成果が上がらない」は大きな誤解

村上 和德
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

「モチベーションが持続しません。どうしたらいいですか?」という相談を受けることがあります。かつては真剣に答えていましたが、次第に違和感を抱くようになり、今では結果を出すためにモチベーションは必要ないと考えています。 「モチベーションがあるから成果が出る。モチベーションがないから成果が出ない」 営業の世界ではしばしば語られる話ですが、これは大きな誤解です。プロフェッショナルは生きがいとして仕事と向き合い、成果を出す人はモチベーションに頼っていません。

やる気が空回りする人は、売りたい欲が強すぎて、自分の行動が利己的になっていることに気づいていません。利己的営業はどこから来るかというと、まさに「売りたい」という欲求から生まれます。だからこそ、その情熱をどうやって抑え込み、顧客目線で考えることができるかが、むしろ営業として大事な要素になります。

しかし現実には、上司から「今日はいくら売ったのか」「どのお客から何と言われたのか」と、数字や反応を聞かれ、報告書を書かされる。そのような環境ではどうしても利己的になってしまいます。利己的になるマネジメントを受けながら、利他的になるのは難しいものです。特に、研修で外部から来た講師に顧客志向になるように言われたからといって、すぐに変われるものではありません。

モチベーションではなく、行動に変換できる力

ではトップ営業は何が違うのか。それは営業プロセスです。彼らは「顧客が欲しいと思っていないのにプレゼンする」という、効率の悪い営業は行いません。まずは顧客に欲しいと思わせ、「一回提案してくれない?」と言わせてから商品の話をする。この順序を徹底しています。効率の悪いやり方を止めない限り、高い営業成果は上げられません。

私の研修には、顧客に「欲しい」と思わせることを徹底的に教え込む「欲しいの想起」というプログラムがあります。このプログラムには私が証券会社の営業で培ってきた経験が生きています。株は生活必需品ではないため、顧客の生活に「株を買わなければいけない」というニーズは存在しません。だからこそ、顧客に「とにかくその会社の株が欲しい!」と思ってもらえなければ、株は売れないのです。営業は、顧客を動かすためにどのような行動をすべきかを徹底的に考える必要があります。

この考え方は株式営業に限らず、どんな営業にも共通します。商品やサービスが生活必需品であろうとなかろうと、この「欲しい」と思わせるプロセスをひたすら繰り返すことでようやく成果につながるからです。ここで大事なのは、このプロセスを支えるノウハウとドゥハウの両方を理解しておくこと。ノウハウだけを知っても、情熱が空回りしてしまいます。どうやったら情熱を空回りさせないようにするかがドゥハウであり、この両面がないと情熱を成果に変えることができません。

大切なのは、強いモチベーションを持つことではなく、その情熱を具体的な行動に変換できるかどうかです。どれだけ知識やスキル、テクニックを学んでも、それを実行に移さなければ何も変わりません。結局のところ、成果を左右するのはモチベーションの有無ではなく、日々の行動習慣です。どんな状況でも行動を積み重ねることができる人だけが、成果を安定して出し続けることができます。

成果を生むのは、モチベーションではなく行動習慣。そして、その行動習慣を生み出す源泉こそが実行する力です。私はこれが実行力の本質だと考えています。

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村上 和德

ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。

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