“完璧な正解”が、部下の成長を奪うとき  ― 教える力ではなく、育む力が未来をつくる ― 共鳴型リーダーシップ3話

2025.09.08

組織・人材

“完璧な正解”が、部下の成長を奪うとき ― 教える力ではなく、育む力が未来をつくる ― 共鳴型リーダーシップ3話

齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

“完璧な正解”が、部下の成長を奪うとき 「部下から質問されたら、すぐに答えられるのが上司の役目だ」 かつての現場では、こうした“指導力”こそがリーダーの資質とされていた。 だが、今この「即答力」が、部下の思考と挑戦心を奪ってしまうケースが急増している。

ここで、部下育成において有効なフレームワークがある。

それが、ラーニングサイクル「Do → Look → Think → Grow」である。

このサイクルは、単なるPDCAではなく、「内省と対話」を核とした成長循環である。


ステップ 意味 上司の問いかけ例

Do 行動したこと 「どんな行動をしたの?」

Look 起きたことを観察・振り返る 「何が起きた? どう感じた?」

Think 背景・意図・価値観を掘る 「なぜ、そう考えたのだろう?」

Grow 気づきから未来を描く 「次はどうしたい?」 「どんな自分を目指したい?」

このサイクルを“対話”のなかで繰り返すことが、

部下の「内省力」×「行動力」×「目的意識」=自走力を育てる。


実践例:「問いかけ」から部下の成長を引き出す現場

実際に、コーチング型マネジメントで成果を上げた事例をご紹介します。

ケース:入社2年目の営業社員・Sさん(20代)

  • 初期は上司の指示待ち。ミスを恐れて積極的に動けない状態だった
  • 直属のマネージャーが、「すぐ答えない」「問いで返す」スタイルへ転換
  • たとえば「どう提案したらいいですか?」→「君だったら、どうする?」
  • 最初は戸惑いながらも、徐々に自分なりの仮説を持ち、行動に繋げるように
  • 半年後、自分から改善案や新しい提案を出すように変化

この変化の背景には、「信じて待つ」マネージャーの姿勢と、問いかけが思考の習慣を育てたことがある。


成果主義とのバランス:「問い」が創る“持続的成果”

「そんな悠長なことより、すぐに結果を出させたいんだよ」

現場マネージャーの多くが、この葛藤に悩んでいる。

たしかに、問いかけには時間がかかる。即効性がないように思えるかもしれない。

だが、ここで立ち止まって考えてみてほしい。

短期的な“正解の模倣”と、

長期的な“自走する思考力”のどちらが、組織にとって価値があるか?

コンサルティング企業McKinsey社のレポートによれば、“自律的に意思決定できる社員が多い企業ほど、長期的な業績が安定して高い”という傾向が明らかになっている。

また、Googleの研究でも、創造性とエンゲージメントが高いチームは、「問いによる探求」を日常的に行っていることが共通点として挙げられている。

つまり、「問いかけるマネジメント」は、

表面的な成果ではなく、“思考の筋力”を鍛え、成果を持続可能にする土壌をつくる手法なのだ。


育成における「信じる力」がもたらすもの

問いとは、信頼の表現である。

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齋藤 秀樹

株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。

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