ミラー・ニューロンと共感力

2007.05.02

組織・人材

ミラー・ニューロンと共感力

横井 真人
産業能率大学 教授

人間にはお互いを分かり合い、コミュニケーションを円滑にとるための細胞があります。しかしデータベースがデータなくしては機能しないように、細胞の能力を活かすには経験知が必要なようです。

他人を思いやる気持ちは相手の心の状態をいかに
推測できるかということだと
脳科学者の茂木健一郎先生は「感動する脳」の中で書いています。
最近の研究では人は脳の中に「鏡」を持ち
そこに他人の表情やしぐさを映し出し、そこに
写し出されたものと、自分の経験を照らし合わす
作業をすること分かってきました。
この鏡にあたる機能を持つ神経細胞を
ミラー・ニューロンと言います。

相手が悲しい表情をしていると認知できるのは、
自分が悲しいと感じる時の表情と比べるからです。
更に、研究によると、人は自分が悲しい思いをした
体験と比較し、その原因までも推測するらしいです。

ですから、相手の気持ちを理解するには自分自身に
様々な体験がなければできないという、言い尽くされた
事柄が科学的に証明されたのです。

ところが人の体験の量と質には個人差がありますし、
ましてや置かれた環境に大きく左右されます。
私も小さいころ、アフリカの子供は食べるものが無いのだから、
残さず食べろと母に言われたものですが、
飢えた経験などあるはずも無く、小食だった自分には
うるさい小言としか聞こえませんでした。

足りない個人的経験を人は何で補うのでしょう?
ありきたりかも知れませんが、そのひとつが
自分とは違う人の人生を垣間見ることです。
リアルな状況設定におけるリアルな反応の
疑似体験を通して知識を得るのです。

ここで大事なのが推測する力です。見たことのない人の
心や、体験したことない事柄を理解しようとすると論理的
思考力が必要となります。そしてその前提としては
言語が必須なのです。言葉があるからこそ考え
ることが可能となるのです。

本が容易に手に入らない時代は、囲炉裏をかこんで
口頭で神話や英雄談、寓話を語り継ぐことで人類は何百年も
人の行動と気持ち、その背景と結果を共有してきました。
本ができてからは飛躍的に共有化が進み、
映像技術が発展してからは、新たに視覚・聴覚情報
が共有化に付加されました(分かりやすくはなりましたが、
同時に幾多の問題が出てきたたようにも思いますが)。

そしてインターネットの時代。
凄まじいスピードと情報量に圧倒され、無数に存在する疑似体験を
自分なりに消化できなくなり、人は戸惑いを覚えているようにも思います。

弊社にはEQを測定するアセスメントがあります。
受験者の中には「感情の理解」能力が低い人がいます。
どのようにすればこの能力が高まるかを聞かれた時、
小説を読んで下さいとアドバイスをすることもあります。

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横井 真人

横井 真人

産業能率大学 教授

個人と組織のパフォーマンス向上を研究。人の行動をスキル、知識、行動意識、感情能力、価値観等の要素に分解し、どの要素が行動に影響を与えているかの観点からパフォーマンスを分析。職場のコミュ二ケーション、リーダーシップ、チームビルディング、ファシリテーション、ソリューション営業、マーケティング等の具体的施策に視点を活用する。

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