東京、神奈川はいよいよ1000円超え。最低賃金引き上げの光と影

2019.10.04

ライフ・ソーシャル

東京、神奈川はいよいよ1000円超え。最低賃金引き上げの光と影

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毎年審議されている労働者の最低賃金改定への提言。今年も結論が出た。東京や神奈川などの大都市では、時給1000円を超えることになり、いよいよ大台突入と反響を呼んでいる。 ちょうど消費税アップのタイミングとも重なって注目を集めるが、一方で地方や中小零細企業への経営圧迫が心配され、喜んでばかりもいられない現状があるようだ。

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中小零細企業の経営を圧迫し、雇用不安への影響も

政府が先導して進める最低賃金の引き上げは、労働者にとっていいことずくめのように見えるが、実は大きなリスクも伴っている。では、その危険性を洗い出してみよう。

企業の生産性に見合っているか

最低賃金引き上げでの最大のリスクは、企業の生産性が賃金上昇に見合っているかだ。
前述のように4年連続で最低賃金は3%ずつ引き上げられているのだが、一般企業を見回してみると、今どき毎年3%のベースアップが果たされている企業などほとんど見当たらない。
賃金水準の高い大手企業の労働者には最低賃金のアップ率はあまり影響がないかもしれないが、非正規雇用者を使ってぎりぎりの営業を繰り返している中小企業や商店などでは、国によって強制的に賃金のアップを定められることは、かなりきつい。
なんとしても前年より3%以上の営業利益を必ず確保しなければならない。

非正規雇用者が職を失う危険がある

中小零細企業やコンビニ、商店など、非正規の労働者を雇って最低賃金レベルの給与で経営を維持している事業者の中には、これまでの経営体制を見直さざるを得なくなる可能性がある。
例えば従業員の数を減らすとか、あるいは最悪の場合倒産や店をたたまなければならないケースもありうる。
そうなれば失業が生まれる。労働者の生活を守るための法律が、結果として労働者の職を奪いかねないというリスクを抱えている。
特に外国人などに依存しているコンビニでの店じまいは深刻だ。

正社員の給与が引き下げられかねない

政府が目標として掲げる「同一労働同一賃金」は、これまで不当な扱いを受けてきた非正規雇用者の地位を引き上げて、労働環境を正社員なみにするという思惑なのだが、企業がこれを逆手に取る可能性がある。
つまり、非正規雇用者の賃金を引き上げるが、賃金レベルを合わせるために正社員の賃金を引き下げるという手段に出る可能性だ。
表向き、基本給を下げるのは難しいにしても、各種手当などを見直し、経営側の賃金負担を少しでも軽減するような動きが出ないとも限らない。
あってはならないことだが、使用者としても経営が維持できなければ、そういう奥の手も使わざるを得なくなる。
そうなると、最低賃金の引き上げが、結果的に正社員の給与引き下げの理由付けになりかねない。

いつまでたっても埋まらない地域間格差

政府にとっての大きな命題のひとつに、東京や大阪などへの大都市集中を抑え、地方を活性化させることがある。
しかし、お金も人の流れも東京へ一極集中している現状は全く改善されていない。最低賃金の額もそれにひと役買っている。
今回、東京の最低賃金は1013円へ引き上げられたが、地方はそれにはまったく追いつかない。
最低の鹿児島は787円。九州は福岡を除いて軒並み780円台だ。東北も800円以下のところが多い。東京と鹿児島の差は226円。この差は誰が見ても決定的に大きい。
もちろん物価も地方はそれなりに安いので一概には比較できないが、例えば住んでいる地域に縁もゆかりもない外国人労働者が日本に来て働くとすれば、少しでも最低賃金の高い大都市周辺で働きたいと思うのは当然だ。
外国人だけでなく、若い世代の東京集中は賃金の格差からも生まれているのが現実。東京が栄えて地方がさびれる構図が、ここでも見えている。

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