ミドル・シニアのキャリア考~分業化のもとで自分をひらく人/閉じる人

画像: Career Portrait Consulting

2019.07.13

組織・人材

ミドル・シニアのキャリア考~分業化のもとで自分をひらく人/閉じる人

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ビジネス社会において、分業システムはますます高度化・細分化しています。働く私たち1人1人も、ますます限定的な分野の仕事で食っていくことになります。あなたにいま与えられている分業役割は、キャリアの海の表層を渡るいっときの小舟でしょうか? それとも、キャリアの大地を深掘りしていく鋤・鍬でしょうか?

◆増えるミドル・シニア層向けのキャリア研修

昨今、企業の人事部門から40代・50代の従業員に向けたキャリア研修を相談されるケースが増えてきました。従来からのキャリア研修の主たる需要は、対象者が20代~30代前半までのものです。若年層のほうが就労意識は固まっていませんし、キャリア形成の選択肢もまだ広いということで、企業としても教育投資の価値が大きいとみているためです。

ところがここにきて、40代・50代向けキャリア研修の実施に関心が高まっています。これまでも50代シニア層に向けた研修はありましたが、どちらかというと、定年後の生活をどうするかというセカンドライフ準備講座的な内容でした。しかし、昨今の内容は就労意識をどうつくりなおすかというものです。

確かに、定年退職の年齢がじわじわと上がりはじめ、かつ、企業に定年までの継続雇用圧力がかかる中、企業としては中高年の従業員に対し、再度リバイバルして、生産性を上げてがんばってもらいたいわけです。

私もときにミドル・シニア層のキャリア研修を受託するのですが、受講者に対し、「定年年齢が延びている昨今、再度ネジを巻き直してもう一踏ん張りしましょう」といったような発信はしません。それは人材資源に対する最大効率化を狙う事業中心の考え方であって、人間中心の考え方ではないからです。

私は「40代・50代の働き盛りにあって、せっかく出合えた仕事を通じて、1つの分野を究めたり、自分という存在をふくらませていったりすることができないとしたら、それはモッタイナイことではないですか」という投げかけをしています。

ともあれ、研修現場で観察できることはいろいろあります。例えば、40代以降、管理職になる層と非管理職で留まる層との間の就労意識の差が総じて大きくなります。非管理職に留まり、特段の専門性も深掘りできていない層は、社内で居心地の悪さを感じながらも、定年まで省エネモードで居続けようとする姿勢になりがちです。この層への就労意識の再喚起はとても難しいものがあります。

また、管理職層においても、管轄部署の数値目標達成に神経を痛める日々が続いているので、働く意味や仕事のやりがいに触れるやいなや、日ごろの不満が噴出し、深い悩みを打ち明ける人も少なからず出てきます。「結局、キャリアのはしごを上ってきたら中間管理職にたどり着いただけのこと。給料のために部下に数値目標達成への発破をかけなければならないが、これがやりたいことではない。だからといって、やりたいことが何かあるわけでもない。ストレスと惰性を相手にするのが今の仕事」といった類いの声をそこかしこで受けます。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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