歴史や価値とともに変化する「お値段」⑮ ── そばとラーメンのお値段

2019.05.21

営業・マーケティング

歴史や価値とともに変化する「お値段」⑮ ── そばとラーメンのお値段

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ものやサービスの値段は時代によって変わるものです。「高い」「安い」の基準になっている貨幣の価値も時代によって大きく変わります。 さまざまな分野のものやサービスの「お値段」を比較してみましょう。 このコラムでは、ものの値段の変遷と、それが現在の貨幣価値ではどのくらいに当たるかを複数の文献にあたって推定・概算しています。ただし、物価は、社会の経済状況、給与水準など複数の要因によって大きく変動しますから、単純な比較はできにくく、アバウトな「値頃感」を推測するしかありません。その際に参考にされることが多いのが、「米」の値段です。

現在は、食生活の多様化がかつてないほど進み、大きく変化してしまいましたが、米は長く日本人の基本的な食物でしたから、米の値段はさまざまな物価の基本的な指標となることができたのです。そんな基本的な指標となるものはいくつかありますが、江戸時代以降、現在でも多くの人たちが好んで食べ、物価に大きく影響されにくいものとして、「そば」もそんな商品のひとつです。
今回は、外食としての「そば」のお値段の変遷を見てみましょう。

江戸時代には、二八そばが流行

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そばは縄文時代から栽培されてきたとされますが、現在のように麺の形にして食べるようになったのは、江戸時代初期になってから。これを「蕎麦切 そばきり」といいました。
ほどなく、現在でも歌舞伎の舞台などで見ることができる肩に荷をしょって売り歩く屋台のそば屋が流行。このころのかけそば一杯の値段は16文で、「二八(にはち)そば」と呼ばれていましたが、これは「2×8=16」のシャレであったともされます。現在の値段として考えると、おそらく数百円程度でしょう。職人が多かった江戸の街で、そばは安直なファストフードとして親しまれましたが、幕末のそば屋の値段を見ると、かけそば16文に対して天ぷらそばや卵とじはちょうど2倍のお値段。清酒一合は天ぷらそばより高い40文しました。明治時代初期には牛鍋が流行したのを受けて、牛肉を入れた「開化南蛮」というメニューも考案されました。

大正時代にはそば屋の定番メニュー・カツ丼が考案

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明治から大正時代にかけては、東京・大阪以外でも都市化が進み、洋食屋、喫茶店やカフェーなどの外食産業が普及。そば屋も全国的にも多く営業されるようになり、明治37年のかけそばは一杯2銭という記録が残っています。ハガキが一枚1銭5厘の時代ですから、高くても200円程度の値頃感だったのではないかと考えられます。

大正時代には、現在ではそば屋の定番メニュー・カツ丼が考案されます。大正7年に早稲田の老舗三朝庵(残念ながらこのお店は閉店してしまいました)が、洋食のカツレツと親子丼を合体させて、カツ丼が考案されたと言われます。ちなみに三朝庵はカレーそばを初めて出したお店としても知られています。
昭和11年には初めて鉄道駅の構内(群馬・高崎駅)にそば屋が開店します。このときにはかけそば一杯10銭程度でした。

手軽な「ファストフード」だったそば

昭和16年に始まった太平洋戦争の時代は食糧難の時代でした。昭和15年には飲食店での米食販売が禁止となり、そば・うどんは代用食として公定価格が10銭と定められました。
戦後になってから自由販売ができるようになり、戦後のインフレとも相まって昭和28年にはかけそばは一杯20円を超えます。それでも現在の感覚で数百円程度だったのではないでしょうか。

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