トヨタとソフトバンクの提携に思う

画像: 写真AC_ei-miさん

2018.11.07

経営・マネジメント

トヨタとソフトバンクの提携に思う

野町 直弘
調達購買コンサルタント

先日トヨタとソフトバンクの提携が発表されました。これは従来の業態の垣根を超えた業務提携ということで注目されたのです。既にソフトバンクは投資会社の性格が強く昨今は事業会社がベンチャー投資や技術シーズの取り込みを行うようなCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が積極化しています。これはどのような意味があるのでしょうか。

一方で米国では2000年頃のネットベンチャー勃興期にアマゾンやGoogle、Facebookなどの企業が生まれ、それらの企業が今の米国産業の競争力を支えています。また、これらの企業が現在のCVCの資金の出し手として新しいベンチャーの育成に寄与しているようです。彼らは自分
たちも投資されて成長してきており、そこで生まれた資金を元に自社だけでなく他社に対しても再投資しています。
それによって新しい産業構造を生み出しているのです。

日本の場合はどうでしょうか。投資側から見るといくつかの草分け的なVCはともかく継続的にCVCをしているファンドはグロービスやソフトバンク程度しか思い浮かびません。

そもそも日本では銀行以外の事業者向け金融はあぶく銭の印象が強く、あまり良い印象が持たれていないこともその一つの要因ではないかと推察します。その一つの象徴的な事案がライブドア事件です。ライブドアは上場資金を元に多くの企業の買収に走りました。堀江氏は当時のベンチャー企業にとってシンボル的な存在でした。罪を犯したから罰せられるのは当然なのかも知れませんが、それによって堀江氏の事業家としての将来が(結果的に)奪われてしまったことはある意味日本的なことです。

結果的に当時優秀な若い人材がベンチャー企業にも多く集まりかけていましたが、その流れはなくなりました。一方で従来型の大企業に優秀な人材が集まるようになりました。人もお金も集まらなければ新しい企業や産業が生まれる筈もありません。政府も金融機関のソフトランディングに税金を注ぐ道を選び、新しい産業を育成し産業構造変革を促すような施策をとることは行なわなかったのです。

結果的に日本企業はほんの一部の企業や業種を除き競争力をなくしていきました。ですから私は今回のCVCが一時期のブームで終わらないことを願っています。
リーマンショック以降企業だけが内部留保を貯めています。資金の出し手の中心は事業会社にならざるを得ない状況。今のCVCが20年後に開花するのです。
そういう観点で長い目でベンチャー育成(と言うか自社シーズや事業展開として)を捉えて欲しいのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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