仕事と自己のマッチング問題~どの次元での整合・不整合なのか

画像: Marco Verch

2018.11.07

組織・人材

仕事と自己のマッチング問題~どの次元での整合・不整合なのか

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

仕事と自己のマッチング問題には次元があります。1つには、年収や労働条件など外形的なものがマッチするかどうかという「モノ」次元。もう1つは、能力的な観点でマッチするかの「コト」次元。そして最深部には「ココロ」次元での整合/不整合があります。これは「在り方」の問題です。

◆「何のための創造か?」という自問も大きくなりはじめた

また、「何のための創造か?」という問いも自分の中で大きくなりはじめました。大企業は立派な事業理念を立てますが、それがお題目になっている場合も多く、多くの事業は組織の自己保存のために動かし続けなくてはならないものになっています。

私は何度か新規事業プロジェクトに関わりましたが、企業内の審査で承認が下りるのは「確実儲かる事業アイデア」であり、必ずしも「やりがいのある事業」ではありません。あるとき、会社にとっても関わる従業員にとってもやりがいがあり、企業理念にもかなった、社会的意義のある事業企画を練りました。もちろん、収支計画は3年後から黒字に転じる絵を描いています。しかし確実的、圧倒的に儲けられる内容ではありません。その計画をみた役員は次のように評価を下しました―――「こういう事業は、行政かNPOに任せればいいんだ」。

自分は創造性を何に向けて発揮したいのか? それは会社の自己保存という狭い目的のためではないし、ましてや役員の首を縦に振らせるためでもない。

そんな中、組織は当然、「戦略的」「技工的」な創造性を求めてきます。さらにまた、管理職となった私に「管理的」な創造性も加えてきます。ここでミスマッチが生じてきたわけです(下図)。


◆「喜びと感じること」と「できること」が異なるという問題

さて、仕事と自己のマッチングを見つめる上で、さらに深い観点を投げかけてみましょう。それが下図です。


これは私が会社員をやめる直前(40歳のころ)の、自分が能力的にできる創造性ジャンルを重ね合わせた図です。この図で重要なのは、「自分が喜びと感じる創造性ジャンル」と「自分が能力的にできる創造性ジャンル」とは異なるものだということです。

40歳になった私は、能力的には「戦略的」「管理的」「技工的」な創造性はあったと思いますし、成果も出していました。その意味で、組織側の要請とはマッチしていたわけです。しかし、心の奥の喜びとはマッチしていない。ここが実に悩ましい点です。能力的にできることを組織の中でどんどんやっていき高く評価されても、自分の内側で深い喜びを感じられない状況は起こりえるのです。

……さて、このときあなたならどうするか? そうした違和には目をつむってがんばり続けるのも一つでしょう。そのとき、ボランティアや趣味活動、副業で本来の自分の創造性の欲求を埋め合わせることが必要になるかもしれません。あるいは、私のように独立して事業を始めるか。雇われない生き方は雇用組織との整合性問題からは解放されますが、組織という保護膜なしに事業を回していく苦労は残ります。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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