少し前まで1か月いくらの定額制といえば、雑誌の定期購読や会員制のスポーツクラブぐらいのものだった。 しかし時代は変わって、いまやなんでも定額制。その形態が大流行している。 携帯電話の通信料などをはじめ、パソコンやスマホを通しての音楽配信や映画見放題などが一般化。毎月の会費さえ払えば、同じサービスをいくらでも受けられる時代になったわけだが、この一定期間料金を払ってサービスを受けることを、「サブスクリプション」という。 このシステムが、いよいよ飲食店のサービスにもおよんできはじめた。その実態と、メリット、デメリットについて、今回は考察しよう。
さらに、多くの飲食店では、決まったメニューのみを定額制にしているため、その周辺の商品の売り上げがアップする可能性がある。具体的にいえば、ラーメンが定額制なら、客はギョーザも注文したくなるはず。コーヒーが飲み放題なら、勢いでケーキを注文する客が出てくる。そうした波及効果は思ったより大きく、結果として売り上げが伸びた飲食店も続出している。
価格の設定が肝となるサブスクリプション・システム
加えて、すぐには目に見えにくいが、メリットとして大きいのは、客の基本データを把握できることだ。定額制の多くは会員制を敷いているため、性別や年齢はもちろん、住所や趣味嗜好なども把握できる可能性が高い。それはやがて店にとっての新商品の開発や店舗スタイルの改革などにつなげることができる。
ただし、このサブスクリプションのシステム。飲食店サイドがもっとも気をつけなければならないのが、適正な価格の設定だ。
価格設定を誤ると、すべての努力は水の泡となる。まず、設定が高いという印象をもたれた場合、会員の数は増えず、定額制をうたっても絵に描いた餅で、売り上げアップにつながらない。
もっと注意しなければならないのは、低すぎる価格設定だ。客の会員数を増やすために、定額商品に関しての売り上げを赤字に設定するのは戦略上ありえるが、周辺の商品と併せての相乗効果をしっかりと見極めて価格を設定しないと、とんでもない赤字となる。会員が増えれば増えるほど、赤字は大きくなる。また、いったん周知した会員価格を変更するのは、会員を減らすきっかけになりかねないので、最初の設定がとても大切だ。
お店にとって、サブスクリプションでもっとも大事なのは、価格の設定なのである。
定額制の会員になる客のメリットとデメリット
飲食店ではサブスクリプションは根づかないだろうと思われていたのに、これほどのブームになったのは、日本人の食事に対する考え方が変わってきたからかもしれない。
以前なら、ラーメンを食べたら1週間はもういらない。ほかのものを食べたい、というのが普通の感覚だった。しかし、今は違う。一度ファンになったら、徹底的に食べる。加えて、価格設定にリーズナブルな印象が持てれば、もう際限なく通う、そんな食事への新しい嗜好が拡がっているのだろう。
そのお店のファンであり、そこのメニューに魅力を感じるなら、定額制はお客にとって大きなメリットとなる。通って、通って、使い倒すのがいい。
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