「人生100歳時代」。年金受給の受取開始年齢は、いつがお得なのか? 

2018.07.20

ライフ・ソーシャル

「人生100歳時代」。年金受給の受取開始年齢は、いつがお得なのか? 

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定年は数十年後……。そんな働き盛りの20代、30代の人の場合、定年も年金も現実味の薄い遠い先の話ではあろう。 しかし、サラリーマンであればいつかは定年を迎える。定年退職を現実問題としてとらえる時期になると、定年退職後の生活の糧となる年金にどうしても関心がいかざるをえなくなる。 そして退職時に直面するのが、「いつから、いったいいくら年金をもらえるのか」「受給開始年齢によって、どのような差があるのか」といった疑問だ。シンプルな疑問ながらも「人生100歳時代」を迎えたいま、選択いかんで老後の人生に大きな影響を与えることになる。 そこで今回は「年金受取開始時期」をいつに設定するとメリットが大きいのか……を考えてみよう。

そして、繰り上げ(前倒し)受給者と65歳からの受給者では、70代後半から逆転が始まることになり、それ以降は総受取額の幅はどんどん広がっていくことになる。こうした数字の“巧妙な仕掛け”からも、以下の結論が導き出されることになる。
●前倒し受給者は、長生きすると損になる
そのほか、繰り上げ(前倒し)受給には、下記のようなデメリットもある。
●遺族年金との併給ができない
●60歳以降に障害者となった場合、障害年金がもらいにくくなる

1.5%しかいない、繰り下げ受給申請者

一方、65歳を超えてもあえて年金を受け取らない「年金の繰り下げ受給」。実は、これも一長一短だ。
こちらは、本来の受給資格を迎えてもあえて年金を受け取らない選択になるが、この場合は最高5年間据え置くことができるので、70歳まで受け取らずにいることができる。

気になるそのメリットは、据え置き期間の長さに応じて、
1か月あたり0.7%の率で増額計算される点だ。

増加率を表にまとめると、表①「年金繰り下げ受給と増額率」ようになる。
クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

たとえば、65歳時に受け取る予定の年金が180万円だった人の場合、その受け取りを70歳まで後ろ倒しすると、180万円×142.0%=255.6万円となり、75.6万円も多く受け取れることになる。
60歳から受け取っている人が135万円なので、その差は毎年120.6万円もの差がついてしまう。これが生涯だ。

こうした数字から“繰り下げ受給はいいことづくめ”……という気がしないでもない。なにしろ70歳以降、月10万円もの差をつけて生活することができるのだ。

しかし、この年金受給開始時期を実際のデータを見ると、
●前倒し受給者は、全体の約20%
●後ろ倒し受給者は、全体の約1.5%

なぜなのか……。
ひとつは、周囲の人が年金をもらい始めてから5年間も、無年金で生活しなければならないことによる。よほど生活に余裕のある人や、仕事での収入がある人でないと、そんなには待てないものだ。

もうひとつ大事なのは、その5年間受け取りを先延ばしした分の金額回収には、約12年かかるといわれている点だ。つまり82歳にならないと、65歳から受け取った人と同額にはならないことになる。当然ながら82歳を超えれば、あとはどんどん差を広げていくことになる。要は、前倒し組とは反対に「長生きすればするほどお得」という仕組みを享受できることになる。

個々のライフスタイルで、受給時期を決める

さて、あなたならどのような選択をするだろう。
人間いつ死ぬかわからないのだから一刻も早く受け取って、今の生活をエンジョイしようという気持ちもよくわかる。
一方、「人生100歳時代」なるキーワードを最近よく見聞きするが、首相官邸のHPでは「人生100年時代構想」と銘打ったコンテンツが披露され、人生100年時代を見据えた経済社会の在り方を構想した政策がすでにスタートしている。
これからは、これまで以上に長生きの時代がやってくる。そうした意味では老後の生活資金が困らないよう少しでも年金受給時期を後ろ倒しにして、70歳以降の生活を安定させようという考え方も理屈にかなっている。つまりは、個々が考えるライフスタイルで年金受給の時期は決まる、といえそうだ。
数字に表れている通り、年金受給者の約8割が65歳という基本の受給年齢で受け取りを開始していることは、翻れば前倒しのリスクも、後ろ倒しのリスクも負いたくないというごく自然な発想、流れで決まっていることなのだろう。
議論かまびすしい年金だが、年金受給開始の選択を個々に預ける方法は、財政がひっ迫する国が用意した苦肉の策でもある。誰もが同じ年に、同じ額の年金を受け取れることが最もよい方法なのだが、現状の年金システムに存在する“巧妙な仕掛け”にひっかかることなく、最善の受給年齢を選択したいものだ。

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