『不死身の特攻兵』はなぜ9回も生きて帰ってこれたのか? 現代も続く「日本型組織の闇」

2018.06.20

経営・マネジメント

『不死身の特攻兵』はなぜ9回も生きて帰ってこれたのか? 現代も続く「日本型組織の闇」

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文化放送「The News Masters TOKYO」のマスターズインタビュー。 ビジネスマンだけでなく組織に属するあらゆる層からの支持を受けて16万部超えのベストセラーとなっている『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)の著者でもあり、劇作家・演出家として長く活躍を続けている鴻上尚史さんにパーソナリティのタケ小山が迫る。

「爆弾を命中させて帰ってくればいい」と言い続けた佐々木友次さん

9回特攻に出て、9回無事に帰ってきた佐々木友次さんという人がいた――。

「これってすごい驚きじゃないですか?」と語り始める鴻上さん。

「当時のことを調べれば調べるほど、軍隊という環境の組織としてのハードさがわかる」

その中で、たった21歳の若者が特攻を命じる50代や60代の上官に向かって「体当たりして死ななくても、爆弾を命中させて帰ってくればいいじゃないですか」と言い続けて、それを実行し続けた

当時の資料を紐解くと、佐々木さんが特攻から戻ってきて、上官から「なぜ、体当たりしないのか?」とののしられていた場面を目撃したという証言がたくさんある。

何度目かには「とにかく死んで来い」と言われて「爆弾を落として船を沈めるのが私の仕事で、無理に死ななくてもいいと思います」と佐々木さんは答えている。

そんなことを軍隊という徹底した上意下達の組織の中で行うことができる日本人が存在した。「想像を超える事実でした」と、鴻上さんは言う。

その佐々木友次さんが、(数年前の取材時には)まだご存命であった。

「そのことを知ったとき、思わず叫びました」

すっかり歴史上の人物だと思い込んでいたからだ。すぐにでもインタビューに飛んでいきたかったが、場所は北海道。

ちょうどその時期は芝居の本番を控えていて稽古に追われていたので、どうしても動けなかった。

「その後、公演を終えてお会いできたのが亡くなる数カ月前でした。合計で5回のインタビューを行うことができた。まるで奇跡のようなタイミングで、これもめぐりあわせだったのかな」と振り返る。

「鴻上さんがそんなにも惹かれて、インタビューをしたり当時の資料を読み込んだりして書き上げたこの本、どんな人たちに読んでもらいたいと思っていたんですか?」とタケが聞くと、「日本型組織に苦しんでいる人ですね」と答えた後で、「これは、実はこの本の編集者が教えてくれたんです」と笑う。

担当編集者が考えたという本の帯には確かにこう書かれている。

「命を消費する日本型組織に立ち向かうには」

これを見た時、なぜ佐々木友次さんに強く惹かれたのかが腑に落ちた、という。

現代はブラック企業、ブラックバイト、ブラック校則のように構成員の命を消費しながら伸びていく組織の中で、それに立ち向かいたいと思いながらもそうできなくて苦しんでいる個人が非常に多い。

たとえば、会社員の残業。

仕事がたくさんあるから残業してそれをこなすということだったはずなのに、いつの間にか上司が残っているから残業する、みんなが残業するから残業する...というように、残業そのものが目的になっている。

これは、特攻という戦術が、「体当たりをしたら船を沈められる」ということで始めたのに、それに対してアメリカ軍がすぐに防衛方法を編み出して効果が少なくなってしまったにもかかわらず「体当たりする」ことそのものが目的になっていった状況とよく似ている。

「会社員だけじゃなく、PTAやママ友といった組織の中でも同様のことが起こっていると思います」

「そういう状況を変えていくためにはどうすればいい?」と問うタケに、「佐々木友次さんという人がいたことを知るだけでも勇気になる」とキッパリと語る鴻上さん。

「本の中では、なぜ特攻という効果のない戦略が続けられたのか?についても、僕なりに分析を行っています。日本人の精神性と密接な関係にある。何らかのヒントを得てはもらえるんじゃないでしょうか」

次のページろくでもないリーダーほど精神論しか語らない

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