職場のウェルビーイングを考える (3) - 実践編:自己表現の機会を

画像: おおばやしあや

2015.11.30

組織・人材

職場のウェルビーイングを考える (3) - 実践編:自己表現の機会を

おおばやし あや
SAI social change and inclusion 代表

会社としてのウェルビーイングとは、「できないこと」に注目するのではなく、その人の強みや「できること」に着目しエンパワーメントを与え、失敗やつまづきを折り込む寛容さも持つことだと著者は考えます。では、メンタルケアの問題も押さえながら、一体どのように実行すればよいのでしょうか。いくつかのキーワードと共に、方法を提案させて頂きたいと思います。

関連記事:職場のウェルビーイングを考える (1) - 人を活かし、組織も活かす / (2) - 「今、できること」に焦点を当てる / (4) - 「フェアな組織であること」 / (5) - スイミーで考える「犠牲にならない」フェアな社員とは

第一回、二回と、ウェルビーイングの概念と、人の強みや「できること」に着目すること、また人を活かし組織を活かすために、組織を変化させてゆくといったことを書かせて頂きました。

GDPに変わる豊かさの指針になるだろうと言われるwell-being。個人の幸福度や健康、生活や仕事の満足度、権利が守られているかなどがその要因となり得ますが、今回は、実際に組織としてどのように実行していけば良いかを提案させて頂きます。

キーワードは以下です。

  1. 現状把握
  2. 対話
  3. 自己表現
  4. 労働者の権利
  5. 目標設定


1. 現状把握

ウェルビーイング(より良く生きること)は誰にでも与えられている権利で、問題のあるなしに関わらず常に考えられなくてはならないものです。ただし、目標設定のためには現状を把握することが求められますし、組織の在り方を変える、待遇改善を目指すにあたり、しかるべき人を説得するには、根拠となるデータが必要となることがあると思います。

心の問題が理由とみられる勤怠や離職率、退職者の穴を埋めるための採用コストに注目するのはもちろん、厚生労働省のメンタルケア専門のサイトにある「5分でできる職場のストレスチェック」を社員の方に行って頂き、結果を送信してもらいまとめる、というのも有効かと思います。

20問程度の質問に答えるだけながら、うつ病チェックに高い精度を持つCES-D(セスデー)という自己評価スケールもあります(日本語版を検索してみてください)。また、うつ症状の中で仕事に影響するとみられるものは以下です。グループリーダーや、個人個人に、以下のようなことはないか対面で尋ねたり、アンケートを取るのも良いかもしれません。

  • 単純な仕事をするのにいつもより時間がかかる
  • いつもよりミスが多くなる
  • 同僚を避ける
  • 物事を決められない
  • 日常的に遅れて出勤してくる
  • 職場で泣き出す
  • 締め切りに遅れる
  • 職場での居眠り

(ルンドベック・ジャパン 2015年2月26日発表のデータより抜粋)

うつ病の経験者は、うつ病発症後に、上記のように自分の仕事のパフォーマンスが(主に集中力や決断力、記憶力において)低下することを自覚しています。個人の不調が、結果的に成果に大きく影響を及ぼしかねないのは、深刻なリスク要素でしょう。

WHOによると世界では、約3億5,000万人 がうつ病を抱えており、ヨーロッパでのうつ病における経済損失は年間920億ユーロ とも言われています。また日本では、2008年のうつ病性障害の疾病費用は3兆901億円と推定され、このうち2兆円超が就業者の生産性低下による損失と非就業による損失とされています。(ルンドベック・ジャパンの発表データより)

うつと診断されている・いないにかかわらず、症状として自覚があり、成果や生産性に影響しているとわかれば、環境改善を目指すのは必須といえるかと思います。チェックから問題が何も見えない場合でも、別のアプローチの方法があります。(「労働者の権利」「目標設定」参照)


2.対話

コミュニケーションはチームや組織の中の血流のようなもので、滞ればあらゆるところが病みかねません。問題解決や成果向上のため対話は必要であるということ、またそれはメールやチャットで済ませればいいというわけではない、と実感されていらっしゃる方は多いかと思います。現状把握にも、「今、できること」を共に探るにも、対話のほうが力を発揮するのは言うまでもありません。

対話にはたくさんのメリットがあります。文章だけではわからない表情や声色などの視覚的・聴覚的情報を得られるという点もあれば、時間を取って話し合う機会を設けることで「自分は気にかけられている」「自分はこの組織にとって大切なのだ」「この人は自分のために勇気を出してくれている」といったことを感じとってもらうこともできます。

また、心に問題を抱えた人がカウンセリングや対話中心のワークショップに助けを求めるように、「自分のことを話す」「相手に受け容れてもらう」がもたらず効果は大きいです。何も話す相手がプロでなくても、つらいことや問題を抱えている時「親身になって自分の話を聴いてもらう」だけで心が楽になるということは、どなたにでもあるかと思います。人と向き合うのは勇気もエネルギーも要ります。メールのほうがとつい利便性を重視してしまいがちですが、最終的に効果を得られるのが対面でのコミュニケーションであることは想像に難くないでしょう。

良い血流の状態を作るため、対話はいつでもされるべきものですが、その習慣を始めるきっかけとして、前項の現状把握を聞き取った上で「できること」を考えたり、ウェルビーイングを軸に置く場合、次のような質問をベースに対話を進め、個人と組織の「できること」を探っていくのも良いかもしれません。

  • 職場で自分が必要とされていると感じるか
  • 自分は尊重されていると思うか
  • 周囲の人は自分の話を聴いてくれているか
  • 自分の力を活かしていると感じるか
  • 会社が自分のためにできることは何だと思うか
  • 良い会社(自分が貢献したくなる会社)とはどんなものか
  • 自分がこの会社に貢献できることは何だと思うか

当然、こういった対話では聞き役に徹するのが前提で、聴く力、傾聴のためのスキルなども検索されば簡単にみつかりますが、一番大切なのは「自分はあなたの味方である」「私たちは仲間である」ということを全身で表しながら問い、全身で聴くことかと思います。

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おおばやし あや

SAI social change and inclusion 代表

フィンランド在住、起業家。約7年の会社勤めの後、フィンランドでソーシャルサービス(福祉の一環)を学び、「人が自分の持つ才能や魅力、創造性に気づき、より力強く生きられること」をテーマに、ささやかながらNPOと事業を立ち上げ、組織向け「個と全を活かす」コミュニケ―ションツールの開発と、研修やワークショップをメインに、フィンランド、日本などで活動しています。

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