失敗学(5)大失敗をしないために(後編)

2007.05.31

経営・マネジメント

失敗学(5)大失敗をしないために(後編)

橋口 寛

大失敗をしないためには、いくつかポイントがあります。 後編では、「ハイプに気をつけること」、「失敗を恐れないこと」、「アーリー・ウォーニング・サインに注目すること」の3つをご紹介しましょう。

ハイプに気をつけること
「ハイプ」とは、過度なパブリシティや騒動、大げさな主張・広告、意図的に人を誤って導くもののことを言います。

ハイプには、三つの種類があります。

・新商品のハイプ(これは凄い新商品だ!というハイプ)
・M&Aのハイプ(このM&Aで業界地図は一変する!というハイプ)
・ドリームチームのハイプ(この組織はまるでドリームチームだ!というハイプ)

です。

ハイプは、さまざまなステークホルダーの判断を狂わせてしまいます。
大切なことは、「これはハイプではないだろうか?」という、「もう一人の自分」の視点を持つことでしょう。

そうしたメタ認知は、大失敗を避けるために、極めて重要な視点です。

失敗を恐れないこと
逆説的ですが、失敗を避けないこと、失敗を恐れないことこそが、大失敗をしないために必要なことです。

ニューヨークタイムズでは、「リスクをとって革新し、そして時々失敗を感受せよ」という言葉が、“キーバリュー”(社員の行動規範のようなもの)として掲げられています。

失敗を受け入れない人、失敗を受け入れない組織は、危険です。
失敗を失敗を認めないままに、泥沼の戦線にリソースをつぎ込みつづけてしまい、やがてにっちもさっちもいかなくなって初めて撤退を考えることになってしまいます。

旧日本軍のいくつかの事例を含め、歴史上この種の大失敗は枚挙に暇がありません。

アーリー・ウォーニング・サインに注目すること
大失敗の前には、必ず小さな失敗があります。

「ハインリッヒの法則」という言葉をご存知の方も多いでしょう。
1つの重大事故の裏側には、29の軽微な事故(ヒヤリ・ハット)があり、その裏側には300の何らかの異常が存在していたという経験則です。

300の異常の段階で、あるいは29のヒヤリ・ハットの段階で、何らかの手を打っていれば、重大事故を避けることができるのです。

大事故の裏に必ず何らかの兆候があるように、企業の大失敗に際しても必ず兆候があります。この兆候を、フィンケルシュタイン教授は、「アーリー・ウォーニング・サイン」と呼んでいました。

読んで字のごとく、「早期に警戒を発していたはずのサイン」、というわけです。
「アーリー・ウォーニング・サイン」には、さまざまなものがあります。
感度の高い経営幹部が、愛想を尽かして突然船から逃げ出す(退社する)こともありますし、現場スタッフの中にメンタルの病が急に増えることもあります。
特定の領域で顧客クレームが急増することもありますし、返品が急増することもあります。不良品発生率が急に上昇することもあれば、逆に急に減少することもあります (恣意的な基準の引き下げ等)。

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