失敗学(1): 彼らはみんな馬鹿だったのか?

2007.04.04

経営・マネジメント

失敗学(1): 彼らはみんな馬鹿だったのか?

橋口 寛

ダートマス大学経営大学院の新進気鋭のシドニー・フィンケルシュタイン教授。 数々の企業の失敗事例を研究する教授の頭に、ある日、シンプルな疑問が浮かんだ。 「Why Smart Executives Fail?」 (優秀な経営者達が、なぜ失敗するのか?) この疑問が、その後7年間にわたって続く長い研究を生み出すことになった。

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「この経営者は、なぜこんなひどい失敗をしたんだろう?誰か意見はあるかい?」

教授が質問をすると、
教室を埋めた約60人ほどの手が一斉に上がりました。

クラス内でどれだけ効果的な発言をしたかが、
「クラス・パーティシペーション」
として問われるビジネススクール。

教授の問いかけに対して手を上げないということは、
「自分をLP(Low Pass)にしてください」
と言っているようなものです。

誰もが我先にと手を上げて、教授に発言機会を求めてアピールするこの光景は、いつもの見慣れたものでした。

やがて、教授に当てられた学生が、周囲の学生の落胆を背に、理路整然と自らの主張を展開し始めました。
「この経営者の意思決定における問題は、三つあると思います。
まず一つ目・・・」

元戦略コンサルタントのMBA学生らしい、立て板に水の説明です。
ピラミッド構造に基づき、ロジカルに経営者の問題点を指摘していきます。

しかし、教授は、彼の説明を聞きながら、どこか違和感を覚えていました。

さまざまな言葉を弄してはいましたが、結局この学生が言わんとすることは、突き詰めて言えば
「このCEOは、経営者としての能力に欠けていた」
という一点に尽きます。

しかし、問題は本当にそんな単純なことなのでしょうか。
大失敗するマネージャー達は、皆揃いも揃って経営者としての資質に欠けていたのでしょうか?

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米国北東部、カナダとの国境に近い、ニューハンプシャー州ハノーバー。
ダートマス大学の経営大学院タックスクールは、人口数千人のこの小さな町に存在します。

世界で最初の経営大学院であるタックスクールは、世界中のビジネススクールのモデルとなったいくつかの学校のうちのひとつです。
毎年行われる、各種の「ビジネススクールランキング」では、世界トップ10の常連であり、最新の「フォーブス」誌のランキングでは1位、「エコノミスト」「ウォールストリート・ジャーナル」誌のランキングでは、いずれも2位にランクされている学校です。

教授の名は、シドニー・フィンケルシュタイン。
タックスクールで戦略論やM&A理論を教える、新進気鋭の教授です。

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フィンケルシュタイン教授は、学生達の議論をひととおり捌き終えると、
議論のエッセンスを集約し始めました。

さまざまな視点から拡散した議論を集約させるのは、傍で見ているほど簡単なことではありません。
教授の手腕が問われるこのプロセス。フィンケルシュタイン教授の手腕は、見事なものでした。

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