​なぜアレキサンダー大王は東征したのか:黄金の呪い

2024.02.26

経営・マネジメント

​なぜアレキサンダー大王は東征したのか:黄金の呪い

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/マケドニアがカッサンドラ金鉱を見つけたときから、フィリッポス・アレキサンダー親子、そして、これに付き従ったギリシア人たちは、破滅の運命へ転がり落ちていった。ペルシアには勝利したものの、その大国の重みを支えるだけの財力を持たず、結局、その最期まで、急場しのぎの資金調達の略奪戦争を自転車操業で続け、その終わりとともに、王帝は死に、帝国は解体してしまった。/

アレキサンダー大王は、若くして東西文化融合の理想のために戦った。なんて、ほんとうだろうか。実際は、彼が果てしなく金鉱探索をしていかないと、あの大帝国はいつ瓦解するかわからないような脆いしろものだった。

この数年、google map は、古代史の研究方法を劇的に変えた。それまでとてつもない予算と手間と時間をかけて現地に行って、その足跡を辿るしかなかったのだが、衛星写真と等高線での立体再現で、文献と地形が照合できるようになった。さらに大きいのが、現地の秘密が見てわかるようになった。その典型が鉱山だ。露天掘りのでかい穴が衛星写真でかんたんに確認できる。くわえて鉄のカーテンに隠されていたソ連邦内、とくに中央アジアが中国企業の投資によって資源開発され、そのニュースがぼんぼん出て来る。これらを地図にプロットしなおすと、古代でも国家機密だったことがあからさまになってくる。

さて、アレキサンダー大王だが、ギリシアの北の辺境、マケドニアが本拠地。こんな国が歴史の舞台の上に躍り出てきたのは、その父フィリッポスがとてつもない軍事国家を作り上げたから。なぜそんなことができたか、というと、東のカルキディケ半島でカッサンドラ金鉱が見つかったから。これを源泉とする莫大な資金で、すでに没落しつつあったギリシア人たちを大量に傭兵として雇い入れて、逆に南のギリシアを征服してしまった。

しかし、前三三六年、王フィリッポスは暗殺されてしまう。その息子アレキサンダーが二〇歳で王位を継いだとき、国庫は破綻していた。ギリシアの征服を拡げていく間は、各都市から戦利品を巻き上げることができ、その自転車操業で支配を拡大してきたが、その支配を維持するには、カッサンドラ金鉱の産出量では賄えない。

そこで、アレキサンダー王が案出したのが、LBO(レバレッジド・バイアウト)。ペルシアのケタ外れの資産を担保に、ギリシア諸都市に出資させ、これで人口過剰のギリシアから傭兵と移民を募って、侵略戦争を始める、というもの。すでに500タラントンの負債があったのに、さらに800タラントンを集めて、1300タラントンの大博打。1タラントンは、人と同じ重さのゴールド。古代ギリシア人は現在より小柄で、身長165センチ、体重60キロくらい。ゴールドは1キロで現在価格、約1000万円。したがって、1タラントンは現在価値で6億円。つまり、アレキサンダー王の種銭は、おおよそ7800億円。これを資本として維持しつつ、実際は現地の戦利品で遠征軍を経営していく。この資金管理のため、専門の財務官ハルパロスが同行した。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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