コンビニの24時間営業問題の本質は『利害の対立』だ

画像: Toshihiro Gamo

2020.07.15

経営・マネジメント

コンビニの24時間営業問題の本質は『利害の対立』だ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

コンビニの「24時間営業」問題に関し、コンビニ本部は「それが本当にFC店オーナーのためになるのか」という問いに答える責務がある。その関心の矛先がどこにあるかを端的に表すのが「ロイヤリティの算出ベース」だ。

新型コロナウイルス騒ぎですっかり話題から消えた格好になっているが、日本でも感染が拡大する直前の2月頃まで、コンビニの24時間営業問題が随分と議論されていたものだ。

元々は大阪府にあるセブン-イレブンのフランチャイズ(FC)店のオーナーが、人手不足などの理由から本部に無断で時短営業に踏み切ったことから騒動が始まった。当初は「契約違反だ」「この人手不足の時代に深夜バイトは雇えない」「その代わりに毎晩レジに立たないといけなくなってしまうFC店オーナーにも、人間らしい生活を送る権利がある」といった辺りまでは、比較的まともな議論が交わされていたと思う。

しかし「そもそも24時間営業する必要があるのか」「いや、既に社会インフラとなったコンビニ店には責任がある」「コンビニが消灯したら深夜の帰り道が暗くて物騒だ」などと、各種メディアが取り上げるにしたがって論点が核心から逸れていった記憶がある。

それはさておき、経産省がコンビニの24時間営業について柔軟な対応を求める提言を行ったこともあってか、当事者たちは事態の収拾を進めたようだ

ファミリーマートは大規模な時短営業の実験に踏み切ると共に、業界で率先して加盟店が時短営業を選択できるようにした。ローソンも深夜休業対象店舗を拡大すると共に、セルフレジ決済の実験を進めている。当初頑なに24時間営業に拘っていた最大手のセブン―イレブンでさえも、本部了承を条件に営業時間の短縮容認に転じている。

それにしても何が問題だったのか、整理してみよう。

24時間営業を止めたい(時短営業したい)というFC店オーナーの言い分はシンプルだ。「深夜営業は売上が上がらない。その一方で、元々値上がり傾向にあるバイト代は深夜増しでさらに高くなり、人件費などの運営費が粗利を上回ってしまう。つまり赤字になる。だから止めたい」というものだ。

仮に深夜のバイトに応募してくれる人を確保できずにオーナー家族自らが深夜営業すれば、バイト代は節約できるかも知れないが、過労で家族の生活は破綻しかねない。これはこれで大きな問題だ。そのため世間は概ねFC店オーナーに同情的だった。

それに対しセブンなどは、「大半のFC店からはそんな問題は指摘されていない。一部の怠慢な店側の問題だ」と当初はあからさまに問題の矮小化を図っていたが、多くのFC店からも同様の問題が指摘されるようになると、別の言い分を主張し始めた。面白いのはそのビジネスモデルゆえの特殊なロジックだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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