日銀政策への疑問(2)消費者物価指数の測定方法は正確なのか

画像: Rosenfeld Media

2018.09.19

経営・マネジメント

日銀政策への疑問(2)消費者物価指数の測定方法は正確なのか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「消費者物価指数(CPI)で見たインフレ率が年平均で2%を突破するまでゼロ金利政策を続ける」という黒田春彦・日銀総裁が掲げる金融政策への「突っ込み」の第二弾として、今回はCPI、すなわち「消費者物価指数」なるものが実はどれほど「消費者にとっての真の物価水準の物差し」から乖離しているのかについて考えてみよう。

前回の記事で「日銀政策への疑問(1)消費者物価指数2%アップ目標は適切なのか」という疑問を指摘した。そこでは、企業の戦略・政策を定める際に掲げる目標設定における「SMARTの法則」に当てはめて、R=Relevant(ズレていない)という観点でみておかしい、ということを申し上げた。

今回は同じSMARTの法則におけるM=Measurable(測定可能)という観点から突っ込んでみたい。

なるほど、CPI(消費者物価指数)で見た年平均インフレ率ということから、公式的にはこの目標は「測定可能」であることに議論の余地はないように一見思える。つまり「毎年のCPIという指数の上昇率だから客観的で正確な測定ができる」というのがこの目標を掲げた(そして支持している)人たちの主張だろう。しかし実はこの「公式見解」には2つの側面で突っ込み処が隠されている。

1.「モノ」から「サービス」への移行に追いついていない

1つは、CPIの対象になっているものが適正なのか、という点だ。つまり消費者にとっての標準的な物価の指標となるべく、CPIは本当に代表的な物価を採り上げて網羅しているのか、ということに素朴な疑問があるのだ。

CPIの対象になっているものはあまりに「モノ」に偏っており、「サービス」が少ないのではないか。そういう指摘は随分以前からあった。長い期間を経て少しずつ指標に含む対象は修正されてはいるが、それでも昨今のバンドル化(組み合わせてのまとめ売り)やサブスクリプション(継続課金方式)ビジネスの進展に追いつかず、あまりに旧来の傾向を引きずっていると言わざるを得ない。

例えば、クルマ関連ではクルマ本体ではなく、修理サービスや保険サービスに消費者はかなりの金額を使うようになっている。また、昨今では企業だけでなく消費者もリースでクルマを買い替えるようになっていたり、カーシェアリング会員になったりしている。

住宅でもリフォームや保証サービスが販売側の重点メニューになっており、家電でも同様に保証サービスを加えるケースが増えている。IT関係だとさらに進んでおり、年間契約での通信からデータ保管、機器貸し出しや保証等々、サブスクリプションづくしだ。

衣服・バッグなどのファッション品でさえ、「月額で何着まで交換できます」といった貸出サービスが若い人の間では市民権を獲得しており、雑誌も電子化されて定額読み放題のサービスが人気だ。ワインだけでなく、青汁やジュース、そして野菜・総菜や弁当までもが定期的に宅配されるようになっている。

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