ユニクロはどこへ行くのか?

画像: IQRemix

 ユニクロが変調を来していると多くのメディアが伝え始めた。ここしばらくの売り上げ不振に対して、それは一過性のものではなく構造的な問題が起き始めているとの指摘だ。一方、実際にユニクロの店舗を訪れてみると、以前とは随分と客層が異なってきていることに気付く。ユニクロに何が起きて、そしてユニクロはどこへ向かおうとしているのか。

■ユニクロの日本離脱シナリオ?
 一方、「ユニクロ(ファーストリテイリング社)は既に人口縮小が進み魅力を失っていく日本市場を見ていないのではないか」という意見も耳にする。前掲の現代ビジネスの記事中でも、中国人日本観光着にとってのユニクロの魅力と、そこで価格を気にせず「爆買い」する姿と、ユニクロ自体も「中国本土でもこの1年だけでおよそ100店舗を新たに出店。内陸の田舎町でさえ、今やユニクロの名を知らない人はいない」という事実を指摘している。だとすると、中国人のあまり訪れない地方を中心とした店舗は「資産の負債化」が進むために、今後順次閉鎖していくというシナリオも考えられるかもしれない。その代わりにさらに中国進出を加速するとか。だがそれは、8月21日の相場が示したような、「中国経済の釜の底抜け」というリスクをさらに大きく抱え込むことになる。そのリスクヘッジとして他の海外拠点も新興国への新規進出も含めて強化しているが、それらが全て収益化するのはまだ時間がかかるであろうし、中国リスクを補うだけの規模はない。とすれば、まだ日本市場を見限るには早すぎるはずだ。

■競争環境の変化から考える値上げの危険性
 現代ビジネスは、慶應大学商学部・白井美由里教授の「誰もがユニクロには『高品質で低価格』というイメージを抱いています。しかし、数年かけてアンケート調査を行ったところ、実は『品質がいいのに安い』のではなく『安いわりに品質が良い』と評価されていることが分かりました」というコメントを掲載している。
 ユニクロを取りまく競争環境も変化している。東洋経済ONLINEの記事では、(既に値上げされた)「1本約5400円になるデニムズボンに対しては、ネット上で「めちゃくちゃ高い。GAPのほうが安い」との声も出ている」と消費者の声を掲載している。しかし、比較されているGAPに関しては、日本では日本参入時こそ「洋モノのオシャレ感」とでもいうような評価で一時もてはやされたが、価格が安いわけでなく、ベーシック故、面白みのないブランドという評価が定着してすっかり凋落している。そのため、同社の店舗入り口では店員が恒常的に四割引ぐらいのセールを呼びかけている状況だ。確かに値引きブランドと比較されればユニクロといえど割高になるかもしれない。しかし、それ以上にGAPの凋落は、ファストブランド勢であるZARAやH&Mの進出とその魅力によって加速したといえる。ファスト勢の品質は良くない。1シーズン着られれば良く、むしろ翌シーズンは買い換えてもらえることを前提に品質レベルを設定している。その代わりに、確かに安い。そのファスト勢人気を考えれば、もはや「服は安くて当たり前」であり、その中で品質が良いと言っても、『品質がいいのに安い』ではなく、『安いわりに品質が良い』と評価が「安いこと前提」になるのは当たり前とも言えるだろう。そのような環境の中で、前述のようにユニクロが(品質をより向上させたとしても)値上げをし、「カジュアルウェアのプレミアムポジション」に移行してしまったら、今度は若者だけでなくより多くの層からの客離れを引き起こすことは想像に難くない。

次のページ■これからのユニクロの生きる道

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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