コーヒー戦争にスタバはどう対応するのか

2008.02.14

営業・マーケティング

コーヒー戦争にスタバはどう対応するのか

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

マクドナルドのコーヒーがおいしくなった。 いや、マクドナルドの宣伝をしたいわけではない。日本も米国に一歩遅れて、本格的なコーヒー戦争が始まったのだと思ったのだ。

■スターバックス日本上陸期の喫茶市場を振り返る

そうした中で、ふと気になるのがスターバックスの店舗形態の変化だ。同社が日本に上陸した1996年当時は、ドトールやベローチェに代表される新業態カフェが、低価格と入りやすさで、旧来の喫茶店を駆逐たあとだった。
覚えている人ももはや少ないかもしれないが、ドトールはスタート当初150円でカウンター立ち飲みスタイルでスタートした、180円に値上げした頃からカウンターに高椅子が設置された。低価格の秘密は客の回転数と同時に、一人あたりの専有面積を抑えていること。つまり、店舗に客を詰め込んでいることも寄与しているのだろう。カウンターに座ると、両脇の客に肘があたらないように気を遣うことになる。
それに対してスターバックスが日本に上陸したときは衝撃的だった。銀座松屋裏の第一号店はさすがに少し狭いが、ソファーや座りやすい椅子が配置されたゆとりある店舗が続々登場した。椅子やテーブルだけではない。照明やポスター、BGMなどがオシャレな空間を演出していた。コーヒーの平均価格帯は400円程度だろうか。価格はドトールより高いが、それだけの付加価値を確実に感じた。
それがいつの間にか、随分と狭苦しいスターバックスの店舗が増えてしまった。商業施設や交通拠点の狭小なスペースに、無理矢理のように出店しているケースも多い。いや、既存店も改装され、テーブル間隔も心なしか狭くなった気がする。全体としてゆとりが感じられなくなってきた。

■スターバックスの提供価値とは?

コーヒーのおいしさや、多彩なバリエーションの魅力はいささかも衰えていないが、スターバックスの提供価値はそれだけではないはずだ。
コトラーの理論を当てはめて考えてみる。
顧客が求める中核たる便益(コアベネフィット)は、単なる「コーヒーという飲料が飲めること」ではなく、「おいしいコーヒーが飲めること」である。マクドナルドまでがプレミアムローストコーヒーに進出してきたとあっては、それは明らかだ。では、何で差別化すればいいのか。通常であれば、コアベネフィットとして提供される価値に、明確なポジショニングを与えるのだ。
例えば、車のコアベネフィットは「移動手段の提供」である。その実現手段として、通常であればどのような走行性能や内外装のデザイン、安全性能などの提供価値を提示する。しかし、プレミアムカーと呼ばれるカテゴリーの車はコアベネフィットをもっと明確化している。BMWであれば「地上最強のドライビングマシン」と定義している。「移動手段」が同時にそれを操る喜びを提供してくれるという価値を表わした言葉だ。ボルボは「世界一安全な車」と言っている。単なる移動手段ではなく、世界一安全な移動を提供してくれるというわけだ。それが実現できない車は作らないという、明確なポリシーを持っている。プレミアムカーはその価格のプレミアム分を、顧客に明確なコアベネフィットとして約束しているということなのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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