津波に対する知覚リスクが低下?

2012.09.26

営業・マーケティング

津波に対する知覚リスクが低下?

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

津波に対して感じるリスク(知覚リスク)が、東北地方太平洋沖地震以降、逆に低下している可能性があります。

行動経済学の研究で明らかになっている「バイアス」(知覚や思考のゆがみ)のひとつ、

「アンカリング(係留)」

はご存知でしょうか?

具体例で示すと、

定価「2万円」のところ半額の「1万円」

といったセールの値札を見た時、2万円が比較の基準となっているため、1万円が安く感じますよね。

これは、「アンカリング」がもたらすバイアスです。

値札情報として提示されている

2万円

が基準点=係留点となり、

「2万円に比べたら1万円は安いな」

という、1種の錯覚を起こさせているわけです。

上記の例のように、アンカリングはマーケティングや販売の施策でよく活用されています。

さて、話を戻しますが、2011年の東日本大震災はとりわけ、

「津波」

によって甚大な人的・物的被害をもたらしたにも関わらず、津波に対して人々が感じるリスクが、逆に低下している可能性を示唆する調査結果があります。

大木聖子氏ら(東京大学地震研究所助教)は、大震災のちょうど1年前、2010年3月に日本全国を対象する調査を行い、

津波の高さに対して危険を感じる度合い

を調べていたのです。

設問としては以下のようなものでした。

------------------------

Q.あなたは、どのくらいの高さの津波を危険だと感じますか?

(1) 10cm以上
(2) 50cm以上
(3) 1m以上
(4) 3m以上
(5) 5m以上
(6) 10m以上

Q.あなた自身は、どのくらいの高さの津波で実際に避難行動を開始しますか?

(選択肢は前の設問と同じ)

-------------------------

そして、震災後の2011年4月には、震災の直接の被害を受けていない地域、
静岡県以西、瀬戸内海に面する17府県の人々に対して同様の質問をしたところ、

「震災後、津波に対するリスク感度は高くなっているだろう」

という予想(仮説)に反する答えが得られたのです。

震災の1年前は17府県の人々は、

・3m未満でも危険と回答:70.8%

でしたが、震災直後は

・同:45.7%

と大きく低下したのです。

また、実際に避難行動を開始する津波の高さについても

・(震災前)3m未満で避難を開始する:60.9%
・(震災後)同:38.2%

とやはり大きく低下。

津波に対するリスク感度は、全体としては鈍くなっているという結果になったのです。

なぜこんな結果になったのでしょうか?

その有力な理由(仮説)として考えられるのが、

「アンカリング」

なのです。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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