現代風立ち飲み屋はオイシイ商売か?

2012.04.03

営業・マーケティング

現代風立ち飲み屋はオイシイ商売か?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 秋葉原にある高架下の、フードが缶詰だけというバーの話。と聞けば、「ああ、立ち飲みね」と思われるかもしれない。確かに個人商店の立ち飲み屋の基本形ではある。だが、40種類もメニュー(缶詰)があるのが特徴だ。同店は「缶’sBar」という屋号で今年1月にスタートしたという。(4月2日付日経MJより)

 同店を運営しているのは個人商店ではない。株式会社日本レストランエンタプライズ。通称、NRE。各駅の駅構内での駅弁の販売や駅そば店などの営業なども手がけているが、メイン業務は新幹線や特急列車での車内販売を展開している。同NREの社内ベンチャーとして出店したのだ。

 商品のラインナップを考えるときには、通常「幅(商品カテゴリ)」と「深さ(アイテム数の多さ)」で考える。幅が広ければ、より多くの顧客ニーズにマッチし、深さがあればその魅力度を増すことができる。
「缶’sBar」の特徴は、幅を「缶詰」だけに絞り込んで、深さを40種類も増やしたことだ。幅の狭さは専門店なら珍しくはない。ラーメン屋はチャーハンなどの飯モノを扱う程度だし、そば屋もうどんもありますよ的な展開ぐらいに絞っている。しかし、40種類も用意はしていない。
 ナゼか。飲食店のバリューチェーン(VC)を考えればすぐにわかる。「食材の調達」→「保管」→「調理」→「配膳・下膳」→「廃棄」だ。最後の「廃棄」は料理の残滓だけではなく、調理されずに鮮度の悪くなった食材も含まれる。つまり、「缶’sBar」は缶詰故に、食材の廃棄リスクが極めて低いのである。
 VCを見てもう1つ気付くだろう。「保管」は全て常温保存可能だ。また、「調理」は缶を開けるだけ。つまり、VCが極めてシンプルなのである。

 VC上では問題点も見えてくる。VCはビジネスのプロセス上のどこで、どの程度コストをかけて付加価値を生み、最終的にどれだけマージン(利益)を出せるかを見るものでもある。その観点からすると、他のプロセスをシンプル=低付加価値・低コスト化している代わりに、「調達」のコストが極めて高いだろうことが想像できる。
しかし、今度は業界内の力関係を見る「5つの力分析」で考えてみると、缶詰を納品する食品メーカーの「売り手の交渉力」はNREという巨大な調達力の前にさほど大きくはないことがわかる。ナゼなら、NREが扱っているのは車内販売で提供する大手メーカーの菓子やスナックなどの乾き物が多く、缶詰なども食品卸会社に一括発注できるであろうからだ。規模の経済が効く。

 一方、VCと飲食業で言われるF/L比を併せて考えると、同店の魅力も見えてくる。「調理」缶を開ける→時々チンをするぐらい。「配膳」も客がセルフで席に持っていくためかからない。つまり、L=Labor(人件費)のコストが低減できるので、Foodの原価が上げられる。スーパーやディスカウントで売っている「さばの水煮缶100円」的なものではなく、ちょっといいモノ、珍しいモノがラインナップできるのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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