効率化の中で「即席もの」になるな

2012.01.18

仕事術

効率化の中で「即席もの」になるな

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

時間を効率化して使うことは問題ではない。むしろ奨励されるべきだ。しかし、そこには常に「即席文化」を生む力がはたらく。そしてもっとも恐るべきは、時間に人間が使われるようになることだ。

 私の実家は三重県の片田舎にある。地域の足として近鉄電車の支線が走っている。運行本数は1時間に3本程度だ。だから1本を逃すと待ち時間が長い。だが、子どものころを振り返るに、電車の待ち時間が長いと感じたことは少ない。私は、いつも駅のホームから西に連なる鈴鹿山脈の稜線を飽きずに眺めていた。山脈の稜線はギザギザに富んでいて形状が面白い。日の入り時刻ともなればとても美しいシルエットを見せてくれた。

 ……「待つ」。
 その時間が実は豊かな何かを育んでいたと感じるのは、私だけだろうか。私たちは「待つ」ことを我慢しなくなった。
 忙しいとは、心を亡くすと書く。試しに、過去1年、3年、5年を振り返ってみてほしい。高速回転で動き、量をこなしてきたけれど、そこに心はなかった……(愕然)なんてことになりはしないだろうか。

 私の人生時間の主人は、私である。

 2012年も明けてすでに2週間が過ぎた。この分でいくと、間もなく進入学の春が来て、夏が始まり、気がつけば秋になっているだろう。時間に使われないためには、1日、1日、心をしっかり置き留めて進んでいくことである。
 心を置き留めるとは、スピードや効率化の流れに受動的に巻き込まれるのではなく、立ち止まるべきときは焦らずに立ち止まり、待つべきときは辛抱強く待ち、1つ1つのやるべきことを「これでいいのだ」という自信のもとに、自分の心のペースで動かしていくことだ。そして5年、10年の時間レンジでどっしりと構えられる肚を持つことだ。1日1日の中身をきちんと詰めていけば、未来には相応のきちんとした果実が成るように人生はできている。

 私は、効率的に作られたワインやチーズを食したいとは思わない。よいものを食べたければ、1年待つことをするし、10年かかるのであれば、それを楽しみに10年待つ。そして何より大事なことは、自分もひとつの生産物だとすれば、自分自身が即席ものにならないことだ。

  「未来について一番よいことは、それが1日1日とやってくること」
  “The best thing about the future is that it only comes one day at a time.”
         ───エイブラハム・リンカーン(第16代アメリカ合衆国大統領)

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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