「やりましょう!」という孫さん、ジョブスさんは名上司?

2011.10.14

ライフ・ソーシャル

「やりましょう!」という孫さん、ジョブスさんは名上司?

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

孫さんや、亡くなったジョブス氏等「カリスマ経営者」と呼ばれる方々がいます。 功績からして賞賛されこそすれ、貶める意は全くありませんが、「働く」視点で見た場合、やはりカリスマの下で働くことは幸福なのでしょうか。

仕事柄転職相談やキャリアカウンセリング等で、「外資系企業というのはやはり実力本位で、正当に成果を評価されるので魅力に感じる」とか「日本の会社社会の情実や派閥などが嫌で外資に転職したい」という話を聞くことが少なくありません。

私は長く外資の世界におりましたが・・・・・・・全然違ってましたよ。外資系企業だけでなく、アカデミアの世界でも同じ。思い切り徒弟制度や派閥、えこひいきなんかあるのが当然だと思っています。
そもそも「正当な評価」なんかが空から降ってくると思ってる時点でマネジメントには遠いセンスのように思います。そんなものないですから。というか、自分がマネジメントになれば、「公平で正当な評価がいかに難しいか」が理解できると思います。

さてカリスマ経営者です。私はそういう方の下では働くのが苦手です。
「やりましょう!」の一言で、これまで進めてきたプランを全部ひっくり返される。デザインや設計を、きちんとプロセスに乗せて社内稟議を通してきたのに社長プレゼンでゼロからやり直す。
もちろんそれらは社長のセンスがあればこその大成功であり、部下の凡才ではおよそ成功には至らなかった可能性の方が高いのだと思いますが、、、

それでも嫌です。
結局カリスマ社長の力で成功するのはビジネスとしては何ら間違っていません。しかしそれは一発当てただけであり、ビジネスがビジネスとして成り立っていくために欠かせないコンピテンシーが無いのです。成果を再現し続けることこそコンピテンシーです。ジョブズ氏が亡くなってもヒットを飛ばし続けられれば良いですが、カリスマがいなくなれば終わり、となるとビジネスの価値からすれば一定の割引がなされるべきと思います。

「やりましょう!」が悪い訳ではありません。市場の動きを機敏に察知する本能は経営者には欠かせないと思いますし、いちいちリサーチレポート見なくとも判断出来るのがカリスマたるゆえんでしょう。
しかし問題はそこではなく、社長が「やりましょう!」と言うまで会社が、組織が、その市場ニーズに気付けない体質にあります。得てしてカリスマはえこ贔屓で物事を進めます。稟議や合議を取っていたら「やりましょう!」なんて出来る訳がないからです。

そうなると部下や社員はいつテーブルひっくり返されるかわからないから黙っていよう。余計な提案して責任押し付けられるのは嫌、という厭戦気分が蔓延しかねません。結果カリスマ社長だけが目立って、業績はウナギ登り、だけど社員は死んだ目で、また事情をよく知る業界の人間からは「あの会社に入るのは・・」と忌避されるという空洞化が起こります。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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