イオンの「弁当売り場の変身」に学ぶべきこと

2011.05.24

営業・マーケティング

イオンの「弁当売り場の変身」に学ぶべきこと

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 イオンの総合スーパー(GMS)の総菜売り場が変身する。グループ会社の「オリジン弁当」の出来たて総菜を導入するというのだ。その他、自ら「超ローカルスーパー」という理念を掲げる愛知県豊橋市の「一期家一笑(いちごやいちえ)」の事例から差別化と収益を上げるポイントを学んでみよう。

 5月20日付日経MJに「“オリジン”の惣菜導入 イオン、3年で120店に」という記事が掲載された。記事に添えられた店舗の総菜・弁当コーナーの写真には「既存商品とあわせ、惣菜の品目数が2割増える」とキャプションがある。
 「おかずをもう一品!」と駄々をこねる旦那を黙らせる必殺技でもあるスーパーの総菜コーナーは忙しい主婦の味方だ。しかし、その品揃えはアジフライやとんかつ、メンチやコロッケなど揚げ物の定番が多くを占め、食指が動かないこともある。同記事によれば、イオンにおいても「従来はコロッケや焼き鳥などが中心だった」とある。

 食指が動かない時にはその背景をついつい邪推してしまう。売れ残った食材を揚げたり焼いたりして提供するのが総菜コーナーなのではないかと・・・。
 実際に、そのプロセスをバリューチェーン(VC)で考えればありえることだ。「食材仕入れ→食品トレーパッケージ→販売→売れ残り廃棄」となるところを、「総菜調理」「総菜販売」というプロセスを入れれば、「食材仕入れ→食品トレーパッケージ→販売→総菜調理→総菜販売」となって廃棄率を下げ、新たな利益を確保できる。総菜調理・総菜販売にかかわるコスト<利益となるならやらない手はない。

 筆者は記事のタイトルを見た時、イオンもGMS売れ残り食材を、惣菜・弁当店のレシピと調理で商品にして売るのかと思ったが、実際は全く逆だった。記事には「オリジンが材料を供給し、毎日イオンの惣菜売り場の従業員が作る」とある。そして、「各店には立ち上げ担当者が1ヶ月間付き、毎月4店のペース導入していく。売り場の従業員は増やさず生産性を高め、利益も上げる」とある。
 つまり、「(イオンとオリジンの)共同仕入れ」を行い規模化してコストを低減。食材は食材として販売し、総菜・弁当は食材の仕入れ価格低減と「調理」のプロセス効率化によってコストを押さえ込んで利益を上げるという、バリューチェーン全体を最適化しているのだ。

 NHK総合テレビで日曜8時25~55分に「サキどり」という番組が放映されている。5月22日の話題は自ら「超ローカルスーパー」という理念を掲げる愛知県豊橋市の「一期家一笑(いちごやいちえ)」という地域密着型スーパーの話題であった。大繁盛という同社のヒミツは、食品スーパーは通常1~2kmを商圏とするのに対して500m商圏という「超地元密着」である。同社の総菜・弁当売り場は地産地消。地場の食材を活かしたメニューが強みでもあるが、特に弁当は「ごはん」も強力な武器だ。
 同社のホームページには、「地元の丸梅伊藤米店さんに毎日搗いて貰うお米を毎朝炊き上げたピッカピカの白飯と、一期家自慢のお惣菜を一つのお弁当箱の中に詰めていきます」とそのこだわりが記されている。番組でも販売時には並べられた弁当のトレーには、ごはんを入れる場所が空いており、買い上げ時に炊きたてを詰める様子が紹介されていた。「地元米店への発注→精米→炊飯→買い上げ時でのパッケージ」というプロセスで差別化を図っているのである。

 自社のプロセスを組み直したり新たな要素を加えたりして価値を付加する。束ねて効率化を図る。そうすることによって、強みの構築・弱みの克服ポイントが見えてくる。また、どこか一カ所だけ改良するのではなく、俯瞰することによって全体として整合性を図って価値を高める・効率化するというプロセス全体の設計図を作り上げることができる。
 「アタリマエ」と思っているプロセスも、バリューチェーンで分解してもう一度考え直してみることをお勧めしたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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