サントリー「ハイボールサーバー」の深謀遠慮

2011.04.21

営業・マーケティング

サントリー「ハイボールサーバー」の深謀遠慮

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 サントリーが復活させて市場に定着させた「ハイボール」。次なる戦略はどこに向かうのか?

ハイボールが今日のように人気となった原点を振り返ってみよう。
2009年8月21日付・日経MJに「サントリーのハイボール復活戦略」と題された記事が掲載された。サントリー酒類の社内で「プロジェクトH」と名付けられた取り組みに関してだ。プロジェクトの目的は、ハイボールという飲み方が「1950年ごろに誕生、一世を風靡(ふうび)した時期もあったが、ウイスキー市場の縮小とともに姿を消しつつあった。それを復活させることでウイスキー需要を喚起する」(記事より)ということにあった。また、「ウイスキーそのものの古いイメージを払拭(ふっしょく)、同時に若者が“飲む”環境を整え、新たなブーム」(同)を作り出すことにあったという。
 プロジェクトは様々な取り組みによって早期に結実した。2009年のヒット商品番付にもランクインし、今日ではすっかりサントリーの狙いどおり市場に定着。多くの料飲店でメニューに並び、缶入りの商品もコンビニをはじめとした流通チャネルで確実に棚を押さえている。重点ターゲットである若者の取り込みも、様々な商品・サービスでよくいわれる「若者離れ」どころかウイスキーに寄りつきもしていなかった状態から、「最初の1杯」にしている人も多いという人気っぷりとなった。

 サントリーが仕掛けた「プロジェクトH」で用いられたのは「角瓶」ブランドを用いたハイボールであるが、その後、消費市場全般の低価格志向にも対応し、より手軽な価格で楽しめる「トリス」のハイボールも展開した、さらにハイボールの裾野を広げることに貢献した。
 しかし、前掲の日経MJの記事にあるように、サントリーの真の狙いは「ハイボールの普及」ではなく、「ウイスキー需要の喚起」である。もちろん、炭酸ソーダで薄めてハイボールにするより、そのままで飲んでもらった方がありがたい。そのため、その次の一手として「WHISKEY on MUSIC」というコンセプトで、様々なアーティストとコラボレーションした広告展開を行い、さりげなくアーティストがカッコよくストレートやロックで飲む姿を訴求した。だが、世は低アルコール全盛である。そのハードルは少々高いといえる。故に、さらに次の一手を打ったのである。

 4月20日付・日経MJのコラム「食を支える」に「サントリー ハイボールサーバー 5銘柄、最適な割方で」という記事が掲載された。5銘柄とは、角瓶、山崎、ザ・マッカラン・ファインオーク12年、ジャック・ダニエル、白州。それらをウイスキーとソーダ1:4、1:3、1:3.5などの最適比率で自動的に作り出すサーバーを開発したという。ソーダもただ者ではない。サーバーの冷却機能を高めることで、「おいしさのカギをにぎる、ウイスキーと割る炭酸の量を増し、液体に含まれる炭酸密度を従来の5.3から6.0まで高めた」(記事より)という。そして、サントリーは「6.0は現時点で最高レベル」であるとコメントしているとある。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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