「働くことを切り拓く力」の脆弱化を考える 〈下〉

2011.01.11

組織・人材

「働くことを切り拓く力」の脆弱化を考える 〈下〉

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

「働くことを切り拓く力」について、キャリア形成の5つの要素「CROSS-ing」モデルを用いて説明する。

◆キャリアを形成する5つの要素:CROSS
 人はどういう意識で職業を選び、どう仕事を発展させ、実績を生み、何を目指して進んで、キャリアを形成していくのだろうか。―――それにつきひとつの考察を試みたのが図1である。

 私はキャリア形成の要素として次の5つをあげる。
  1)能力を豊かにする〈enriching CAPABILITY〉
  2)ロールモデルを持つ〈having a ROLE MODEL〉
  3)機会を見出す〈finding an OPPOURTUNITY〉
  4)意義を与える〈giving SIGNIFICANCE〉
  5)1~4を統合する〈SYNTHESIZE〉

 この5つの要素を交差させるところで、私たちは職業選択をし、仕事を発展させ、実績をつくり、方向性を決めてキャリア形成を進めていく。
 次に図2はその5要素を詳しく示したものである。1~4の要素はそれぞれに段階がある。この段階を経て統合されているほどその人は強いキャリア形成を行っていることになる。

〈1〉能力〈CAPABILITY〉の形成要素
 誰しも「能力がある・適性がある」という分野で職業選択をし、仕事したいと思う。これは第一段階として当然のことだ。
 しかし、キャリアをつくっていく上でもっと重要なことは、図に第二段階として示してある「能力の展開」が行えるかどうかだ。これはつまり、環境が変わっても自分の能力を応用展開させて、きちんと成果が出せるかどうかを言う。会社組織で働いていると、人事異動や転勤はつきものだ。そして市場環境の変化にも直面する。そうしたときに、自分のベース能力を変形させる力を持っていないとすぐに行き詰まる。行き詰まったときに、「これは人事配置のミスだ」とか「適性の向かない環境に回されてモチベーションが上がらない」とか不満を漏らして、くさるか、短気を起こして転職するか、これはキャリアを切り拓く力の弱い人の姿である。

 以前、元の会社の後輩社員から相談を受けたことがある。彼は大学時代に広告研究会で活躍していた人間である。そのクリエイティブ能力から、長年、広告部に配属されていたのだが、組織の大改造で営業部隊の最前線へ。
 くさりかけていた彼に私は「営業だから非クリエイティブと決めつけないで、クリエイティブのレンズを通して営業を見たら存外面白いかもしれないよ」と伝えた。その後1年半ほどして、彼は営業部隊でPOPやリーフレットを作成したり、納入取引先のウェブサイトのデザインを支援したりするクリエイティブチームを起こし、そこのリーダーにおさまったとの連絡を受けた。彼は能力を展開して、たくましく新境地を拓いたのだ。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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