「マーケティング3.0」考-1

2011.01.08

営業・マーケティング

「マーケティング3.0」考-1

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これは、昨年(2010年)後半、メルマガ『スーパー広報術』に連載した記事を統合・一部リライトしたものです。なお、原書に基づいて執筆したため、翻訳版とは日本語の表現が若干異なっています。

こうした消費者に受け入れられるため、マーケティングは、消費者の個人的なニーズだけに着目するわけにはいかなくなりました。単に「商品を購入する人」として見るのではなく、全人間的に消費者を把握し、彼らが抱えている社会・世界レベルの懸念や関心事にも、ビジネスを通じて何らかの形で対応する必要があります。

つまり、Marketing3.0は、「人類中心(human-centric)のマーケティング」なのです。

個人的なニーズを超え、現代の消費者が抱える社会全体・地球全体に関わる問題(=人類レベルの問題)の解決に、ビジネス、そしてマーケティングが何らかの形で'意識的に'貢献することが必要になったということです。

●3つの力

まず、「Marketing3.0」という新たなマーケティングの概念が要求されるようになった背景にある「3つの力」について解説しましょう。3つの力とは、「参加の時代」「グロバールパラドックスの時代」「創造的社会の時代」です。

・参加の時代

「参加の時代」とは、企業の商品開発やマーケティングコミュニケーションに、消費者が積極的に参加することができるようになったということです。これを実現したのは言うまでもなくIT革命ですね。低価格のパソコンや携帯電話、インターネット接続サービス、そして多くの場合、無料で手に入る優れたオープンソースの各種ソフトウェア。


IT革命によって、企業と消費者は、簡単に双方向のやりとりができるようになりましたし、人々がつながりあうソーシャルメディアによって、消費者の集団的なパワーが増大しました。

したがって、これからの企業は、事業活動に積極的に消費者を巻き込み、彼らの意見や要望をリアルタイムに取り入れることが求められます。これは、消費者が本当に求めている、有益な製品づくりに役立つだけでなく、顧客との絆づくりにもつながるのです。

ブランド構築についても、マーケターは従来のようなコントロール力を持ち得ず、消費者ネットワーク、消費者コミュニティの集団的パワーが、ブランドに大きな影響を与えるようになっています。もはや、ブランド構築もある意味、消費者に委ねる時代なのです。


・グローバルパラドックスの時代

次に「グローバルパラドックスの時代」について。IT革命と輸送技術の進展のおかげで、世界の国々の間の情報・物資のやりとりは非常に早く簡単に低コストになりました。いわば世界は一つの国のようにあらゆるものが自由に流れつつある時代です。

次のページ・創造的社会の時代

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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