新卒採用における適性検査の使用実態と意味を問う。

2010.12.06

組織・人材

新卒採用における適性検査の使用実態と意味を問う。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

適性検査は、有効に使いたいけど使いこなせない(又は使う気はないけど実施している)人事と、大して意味もないのに受けさせられている学生という構図で、結構不幸な状態なのだと思わざるを得ません。

こう見ると、有効に使いたいけど使いこなせない(又は使う気はないけど実施している)人事と、大して意味もないのに受けさせられている学生という構図で、結構不幸な状態なのだと思わざるを得ませんが、では、適性検査というのは採用や人事管理上どの程度重要なものなのかと考えます。例えば、能力検査で高いスコアだった学生が、本当に能力が高かったか。意欲が高く行動的であると判定された学生は、入社後実際にそのような働きぶりであったか。ストレス耐性が弱いと出た学生が、入社後メンタルヘルス不全を起こしたか。このような関連を明確に見出した会社があったら是非お目にかかりたいと思うほど、適性検査とその後の状況の関係は不透明です。私の経験で言うなら、能力検査で高いスコアだった学生は、学習塾や家庭教師のバイトをしていたり、教員養成系の学部だったりすることが多かったわけで、そりゃそうなるだろうなといつも思っておりました。

適性検査によって、面接で分からないことが分かる可能性があるかもしれません。が、それと入社後の実態には関連が見出せない、関連が非常に曖昧です。少なくとも、採用選考の時点で検査結果に表れた要素が、入社後の職場や上司や仕事や顧客によって変わってしまう(良く現れたり悪く現れたりする)のは明らかです。財務諸表だけ見て会社を買う投資家がいないように、適性検査だけで採用する会社はありませんし、その時の財務諸表に見える良い点・問題点がその後の経営によって変わるように、その時点の適性検査の結果とその後のマネジメント・人事管理の重要性は比べようもありません。それ以前に、見た目や雰囲気、コミュニケーションの力といった仕事の成果に大きく影響する要素が分からないのに、仕事への適性を云々しようというわけですから、もともとかなりの限界があることは、検査の開発に取り組む専門家さえ自覚しているであろう自明のことでしょう。

ある理論に基づいて作った検査を実施し、その被験者の現実の行動特性や性格、パファーマンスなどを調査した結果、その関連性が認められたという調査・論文は多くあるようですが、それは当たり前の話。人の性格や特性を構成する要素・因子を定め、これらを分解して設問にして選択させれば、精度の差はあれ普通はそういう結果になるでしょう。大切なことは、その人達が、その後どのような環境におかれてもそうかというと、そうではないということ。その後の活躍度合いや働きぶりは、職場の環境やマネジメント次第だとすると検査にはどのような意味があるのか。いや、採用だけに限って言っても、「適性検査が普及し、昔よりも新卒採用の精度が良くなっている」「適性検査をやっている会社とそうでない会社は採用の質が違う」という話が、どのくらいあるのでしょうか。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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