チキン戦争:ケンタッキーは「集中戦略」で逃げ切れるか?

2010.11.12

営業・マーケティング

チキン戦争:ケンタッキーは「集中戦略」で逃げ切れるか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 今年の夏の訪れと共に勃発した、マクドナルド対ケンタッキー・フライド・チキンの「チキン戦争」。猛暑を通り越した激暑だったこの夏の暑ささながらに、マクドナルドが激しい攻撃を仕掛けるも、ほぼ静観を決めていたケンタッキーに動きが見えてきた。果たして戦いの行方やいかに?

 ハーバード大学経営大学院教授のマイケル・ポーターは「事業戦略の3類型」を示した。コスト競争力で勝っていく「コストリーダーシップ戦略」。差別化をして競争相手より優位に立つ「差別化戦略」。特定分野に的を絞り、経営資源を集中する「集中戦略」である。

 マクドナルドは極めてわかりやすい「コストリーダーシップ戦略」だ。それも極めて徹底した。2009年12月31日時点で国内3715店にのぼる店舗数を背景にした規模の経済、調達力に敵うものはいない。しかも、低コストと収益性を重視して直営志向からFC展開移行する一方、前年度の通期決算の場で、収益性の低い店舗を12カ月以内に433店舗を閉鎖することを発表した。飲食業の売上げ№1をゼンショーに明け渡したが、直営志向・売上げ重視の同社と対照的な戦略であるといえる。

 コストリーダーは通常、業界の中でただ1社しか存在し得ない。そして、それに対抗するためには「差別化」が必要だ。しかし、ケンタッキーはマクドナルドが「ハンバーガーレストラン事業」の枠を超えて、チキンだけでなくファストフード全般を戦場としているのに対して、ケンタッキーはもともと「フライドチキン」という狭いドメインで商いをしていた。つまり、「集中戦略」を取っていたわけだ。それを「揚げないチキンメニュー」に注力する戦略によって、「チキン」全般にドメインを拡張したことになる。
 ドメインを拡張すると、チキンが売り物の外食店全般が競合となるが、それを100店規模に拡大することで規模の経済を効かせ、調達力を強化してコスト優位に立とうとしていると考えられる。「チキン」という特定分野に的を絞りつつ、その中でコスト競争力で勝っていく「コスト集中戦略」である。

 ケンタッキーの「集中戦略」のキモはもう一つある。ターゲット層の集中だ。
 渋谷公園通り店オープンの日本ケンタッキー・フライド・チキンのニュースリリースにも、<若い女性層をターゲットに、お食事に、カフェタイムに、ちょっとしたブレイクにと、お気軽にご利用いただける店舗>というターゲティングとポジショニングが明記されていた。上記の日経記事でも「20~30代の女性」と記載されている。

 「集中する」ということは「捨てる」ことでもある。「集中と選択」というわりには、「選択しても集中できていない戦略」が散見される。「捨てる勇気」が持てないのだ。
 渋谷公園通り店オープンのリリースでは<白とシルバーを基調としたカラーに赤を効果的に配して新しいKFCを演出します>とあり、日経の記事でもそれが20~30代の女性を意識したものであるとして、今後の出店においてもそれを踏襲するという文脈で書いてある。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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