青汁はコカ・コーラの自販機に並ぶのか?

2010.09.02

経営・マネジメント

青汁はコカ・コーラの自販機に並ぶのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 「青汁」を販売する健康食品のキューサイを、コカ・コーラウエストが360億円を投じて完全子会社化するとの報道が8月31日に流れた。「コーラの自販機に青汁が並ぶのか?」という反応がネット上で散見されたが、その狙いはどこにあるのか?

 日本におけるコカ・コーラブランドを構成するしくみは、コーラ原液の供給と、製品企画・開発、広告といったマーケティングを行う日本コカ・コーラと、全国各地域で製品製造・販売を行うボトラー会社と関連会社で成立している。その中でもコカ・コーラウエストは、日本最大のボトリング会社である。関西から中国、九州に展開する営業エリアの広さや、社員数もコカ・コーラブランドに関わる全従業員2万3000人中、8,300人以上を抱えるなど規模の大きさは突出した存在だ。

 キューサイは、悪役俳優として有名な八名信夫が、しかめ面で「うーん、まずい。もう一杯」と言うCMで有名な「青汁」のメーカーだ。他にも「ヒアルロン酸コラーゲン」などの健康食品の通販や総菜宅配や農産物直販などにも業容を拡大しているという。

 メディアの報道によれば、記者会見でコカ・コーラウエストは「中長期的には健康飲料の開発などで相乗効果を発揮したい」と発表したという。(8月31日日経新聞)「事業面での連携策などは今後詰める方針」(同)とのことなので、すぐに自販機に「うーん、まずい」という飲料が並ぶわけではないかもしれない。しかし、買収の背景は明確だ。

 飲料業界のガリバーであるコカ・コーラウエストも、昨今、苦境にあえいでいる。09年12月期に上場来初の75億円の赤字を計上した。全国248万台の自販機のうち98万台を有することが飲料業界ナンバーワンに長期間君臨するコカ・コーラの力の源泉であるが、既に市場は飽和しているといわれている。特に景気の低迷によって建設現場が減少し、そこに設置される自販機も減少している影響なども大きく、今後の少子化・人口減少でさらに不透明感が増している。今のままでは明るい未来は描けない。記者会見コメントにある「相乗効果」に期待したわけだ。

 しかし、「相乗効果」や「シナジー」というキーワードは時に大いなる幻想に終わる事もある。
 世界最大のM&Aといわれたタイム・ワーナーとAOLは2000年に、いわゆる「バーチャルとリアルの融合」(←死語)を狙って合併。しかし、有効な成果を見いだせず、2009年にタイム・ワーナーがAOL部門の分離・スピンオフを決定するに至っている。

 コカ・コーラウエストとキューサイには、どのようなシナジーが期待できるのか。
 「健康飲料の開発などで相乗効果」という意味では、コカ・コーラウエストは単なるボトリング業務だけではなく、日本独自製品の開発を担うなどの役割も持っている。ボトリング会社による独自ブランドは、古くは1975年に、利根コカ・コーラが後に「ジョージア」ブランドに編入される「マックスコーヒー」を開発した事例もある。
こと「健康飲料」というカテゴリーにおいては、コカ・コーラは得意領域であるとは言い難い。厚生労働省が健康づくりのための食習慣改善のきっかけとしてお墨付きを与えている、いわゆる「特保」指定の飲料が、飲料各社の中でも特に少ない。そこで、キューサーの開発ノウハウに期待が寄せられることになる。
 一方、販売不振はボトリング会社として、生産設備が余剰になることを意味している。その設備を用いた効率的な生産や、圧倒的な規模の経済をいかした購買力を発揮することができる。つまり、「生産シナジー」が大きく期待できるのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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