転職先のバカの壁

2007.04.10

組織・人材

転職先のバカの壁

横井 真人
産業能率大学 教授

自分の常識は他人の非常識。この心理を知っていれば感情の壁も乗り越えられ、コミュニケーションが鳥や安くなります!?転職した先の仕事のプロトコルを早めに調査しましょう。

私は大勢の前で感情の壁について話す時、
よく養老孟司先生のベストセラーである「バカの壁」を引用します。
人は自分の知っていること、
イコール常識だと思い込む節があるようです。

お互い異なった前提で話していることに最初は気がつきません。
そして、相手と話が合わなくなり始めると、
理解できないのを相手のせいにしてしまうのです。
自分の常識を疑わないバカの壁、
相手のせいにするバカの壁。

お笑い芸人のアンジャッシュのネタのように、
小さな勘違いが大きな認識のズレとなり、
最後は相互不信に陥ってしまう場合もあります。
前回書いた部長の例に至っては、
当事者にとっては笑いごとではないのです。

バカの壁の上に感情の壁が積みあがって行きます。

転職者が成功しない理由はいくつかありますが、
転職先のバカの壁もその一つです。
転職初日に人事が説明してくれる就業規則以外にも、
実は暗黙のルールが沢山存在するのが会社です。

私が最初に転職した先で「早めにね」とは半日以内
という意味が分かったのは1日経ってから、
「まだなの」と催促された時です。

レポートをワードでまとめたら、
「文字が多くて分かりにくいから、ちゃんとパワーポイントにしてよね」
と言われて初めてまとめ方の違いに気がつきました。

こんなことが続くと、
自分の実力以前の段階で「出来ないやつ」
という印象を持たれたり、
その印象を匂わす相手の言動から
自信を失ってしまうこともあるでしょう。
感情の壁が立ちはだかります。

能力・スキルが有っても、「常識」が違うために、
スタートラインに立つ前に転んでしまうのです。

こんな時大事なのは、感情(気持ち)を切り替えることです。
前の会社での実績を思い出し、自分を勇気付けたり、
友人に思いをぶちまけたり、
スポーツで汗を流したり。

自分自身でできることも大事ですが、
受け入れる会社側がこのような転職者の感情(気持ち)や
受け入れる側の感情(心理)を理解し、
適切な施策を用意することも必要です。
折角時間とお金をかけて採用した人材なのですから。

私は職場の暗黙のルールを仕事のプロトコルと呼びます。
これには仕事のスピード感、書類のまとめ方の他、
意思決定の方法、報告・連絡の仕方なども含まれます。
これらを少なくとも部門単位でまとめて渡すなり、
配属先に相談窓口となる社員を置き、伝えることで、
多くの転職者が救われることでしょう。

私の場合、上司であったアメリカ人の重役の一言が
非常に役に立ちました。
「横井さぁん、1ヶ月以内に部門のマネージャー全員と昼食に行きなさぁい。
あなたから溶け込むことが大事でぇす」。
え、そっちから何か教えてくれるんじゃないの?だってこっちは
入った方でしょ、というのがその時の正直な気持ちでした。

私は先のプロトコルの違いに気づいた後、ようやくその約束を守り、
手当たり次第、自己紹介をし、昼食に誘いました。
そうすると向こうから興味を持ってくれ、
後々、色々なプロトコルを教えてくれることになったのです。
すると感情の壁がどんどん崩れて行きました。
まるで魔法のように。

恥ずかしいとか、相手から何かしてくれるべきだ、
という自分で作った感情の壁を乗り越えたところに
答えはあったのです。
でもその時点ではまだEQという言葉は知りませんでした。

次回につづく

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横井 真人

横井 真人

産業能率大学 教授

個人と組織のパフォーマンス向上を研究。人の行動をスキル、知識、行動意識、感情能力、価値観等の要素に分解し、どの要素が行動に影響を与えているかの観点からパフォーマンスを分析。職場のコミュ二ケーション、リーダーシップ、チームビルディング、ファシリテーション、ソリューション営業、マーケティング等の具体的施策に視点を活用する。

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