「とにかく傘を持って行け!」に、“?”となる部下の気持ち。

2010.05.17

組織・人材

「とにかく傘を持って行け!」に、“?”となる部下の気持ち。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

マネジャーは、「空の状況」「これからの天候」「だからすべきこと」についてメンバーと丁寧に共有を図らねばなりません。

「空・雨・傘」という有名なフレームワーク。「空には雲が出てきている。ということは、雨が降るかもしれない。だから、傘を持っていこう。」を縮めて言ったもので、空に雲が出てきた=客観的な事実、雨が降るかもしれない=推測・根拠、傘を持っていく=意思・とるべき行動、のことを表わしています。企業・組織が戦略や行動を決定しようとする場合に、空がどうなっていて(客観的な状況認識)、これからどんな天気になりそうで(これからどんな事態が推測され)、どういう傘を持っていくか(だからどうする)をロジカルに考えるためのフレームで、大切なことを勘や前例や横並びで決めてはいませんか?というメッセージと言えるでしょう。

このフレームは、マネジャーとメンバーの関係においても、非常に使いやすい考え方です。まず両者は、“空がどのようになっているか”を共有しなければなりません。上司が見れば、経験や知識が豊富だから「雲が出てきた」ことが分るけれども、部下の目には「空には雲がない」と映ることがあります。逆に、上司にとってその豊富な経験をもとにすれば「雲ではない」と感じられるが、部下にとっては「大きな、それも黒い雲」に見えるようなことは少なくありません。上司が部下に仕事や役割や目標を与える際、このように状況認識にギャップがあると、互いの期待に応えられるような働きぶりにはなりません。

次に、“これから、どんな天気が予想されるか”を検討しなければなりません。状況認識を共有したところで、今後の見通しについて考えるわけです。快晴になるのか小雨か嵐か、それがどのくらい続くかについて共有します。ここでも、前例や見聞の豊富な上司とそうでない部下にはシナリオを描く力に差があるわけで、「これくらいの雨が降るに決まってるやろ」という決め付けは、部下の具体的行動への納得性を低くします。また、本当にそうなるかどうかを上司自身が慎重に考慮する必要があるのも当然です。そして最後に、その際に大切なことは何か、我々はどうあるべきか、どうすべきかを同様に丁寧に思考した上で、決定・共有することになります。

が、「四の五の言わずに、この傘を持っていけ」というような指示を、ついしてしまいがちです。空の状況、雨降りの予測、これが自分には見えているし、大体そうなるものなのだから、その部分はすっかり省略した上で「この傘を持っていきなさい」と。雲が出てきたことも、雨が降りそうなことも知らない子供に、素晴らしい機能とデザインの傘を持たせているのと一緒です。メンバーは、なぜこの傘を持って歩いているのだろうという疑問が日々大きくなっていきます。ところがマネジャーは、俺の言うとおりになるからとにかく頑張れと言う。やっていればうまくいくはずなのに、どうして頑張らないんだと言う。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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