ETC型新卒入社社員の潜在力を活かすことができるか?

2010.04.05

組織・人材

ETC型新卒入社社員の潜在力を活かすことができるか?

松本 真治
有限会社ワースプランニング 代表取締役

 今年の新入社員は「ETC型」!日本生産性本部が毎年の新卒入社社員のタイプの命名を行っているが、世相を反映していて中々面白い。多様化する現代社会の中で一律的なタイプ命名に関しては時代錯誤の面も否めないが、そのネーミングの詳細をみると、「なるほど」と唸らせる点もあり、考えさせられることも多々ある。一件聞いただけではわからない今年のネーミングは奥が深い。

 昨年の新卒入社社員は入社時こそ内定取り消し等で社会問題化したように厳しい状況であったが、実際の就職活動時はリーマンショック前であり、比較的売り手市場に近いものがあった。
 ところが、今年の新卒入社社員の就職戦線は一転して厳しい状況下におかれた。リーマンショック後の環境激変により多くの企業の業績悪化に伴い採用も慎重になった逆風下で買い手市場となった。
 この様な厳しい就職戦線を勝ち抜いてきただけに、秘めたる潜在力はあるようだ。特に情報革新はめざましく、ツイッターやスマートフォンといった新たな情報ツールの登場もあり、従来に増してIT活用に長け、効率的な行動ができるスマートさを持ち備えている。
 しかし、反面、効率性を重視するあまり、直接的な人とのコミュニケーションの機会が少なくなり、対人関係においてはうまく振舞えない一面もある。
 ETC型と言われる一つの所以はここにある。
 ETCが開発され、止まらずに料金所を通過できるようになり高速道路の走行が効率的になったが、反面、今までのようにドライバーと徴収員との対話がなくなった。
 また、ETCを利用したことのある人であれば誰でも経験していることであるが、ややオーバースピードで進入すると直前までバーが開かなく思わずブレーキを踏むことになる。
 ここにETC型と言われるもう一つの所以がある。
 つまり、今年の新入社員は、直接的なコミュニケーション不足もあり打ち解けて心が開く、すなわち心のバーが上がるまで時間がかかるのである。したがって、上司や先輩が性急に関係性を築こうとすると衝突したり思わぬブレーキをかけざるを得なくなったりするので要注意とのことである。
 なるほど時代背景を踏まえ奥深い考察を交えた納得性のある人物像である。ただ納得して終わるわけにはいかない。新入社員を選定するためのリクルーティングコストはかなり要している。このETC型新卒入社社員を一日も早く一人前の社員に育成し、投資コストを回収していく使命が既に始まっているのである。
 それだけにETC型社員を育成・指導する立場にある上司や先輩社員のリーダーシップのとり方が重要になってくる。
 ところが、日本の企業におけるリーダーシップの評価は世界的に見て非常に低いレベルにある。世界的優良企業が多い中でも、リーダーシップになるとアジアの中でも新興国にさえ後塵を拝するほどである。
 日本の代表的なリーダーである歴代首相のリーダーシップをふりかえると、日本のレベルの低さはうなずける。就任時こそ支持率の高かった鳩山首相も支持率が大幅に低下し、リーダーシップの欠如が囁かれている。
 部下である閣僚に振り回され、発言が二転三転し、掲げるビジョンとの整合性がなくなっている最近の言動をみると期待されるリーダーシップからはほど遠い。例の沖縄基地問題に関する腹案発言もそうであるが、時折みられる突拍子もない根拠なき発言には驚かされた人も多かっただろう。部下である閣僚も右往左往するばかりである。
 鳩山首相のニックネームが宇宙人、ETであるという話はまさに言い得て妙である。実は、今の日本企業の組織に鎮座するリーダーにもこのET型上司が多いように思える。要するに、ビジョンは掲げるものの計画性が曖昧で行動が伴わないため実現性が不透明であったり、言うことが二転三転したり、さらには時折突拍子もない発言をしたりと、心当たりのある方も多いのではないだろうか。
 はたして、ET型上司にETC型社員の育成・指導はできるのだろうか?
 ETC型社員は対人関係力において未発達な側面はあるが、情報活用に長けていて効率的な行動がとれるという優れた側面もある。つまり、個人で完結する活動には強いのであるが、協働して進める活動には弱いのである。しかし、組織としての継続的な成果を生み出すためにはチームとしての活動、協働がより重要になってくる。
 チームで職務を遂行する際、メンバーが取り組む活動は、タスクワークとチームワークの二つに大別される。タスクワークとは、メンバー一人ひとりが取り組む業務の中で行うワークのことであり、個人で完結する活動である。対して、チームワークとはメンバー間でコミュニケーションをとったり、互いに助け合ったりする活動である。この二つのワークが相まってこそ高いチームパフォーマンスが生み出されるのである。
 比較的高い潜在力を持っているETC型社員にはチームワークがうまくできれば個も組織も成長が期待できる。
 しかし、ET型上司のような不明瞭なリーダーシップでは心のバーが上がりにくいETC型社員の潜在力は花開かないであろう。
 ET型上司ではなく、従業員が納得し満足できるような風土をつくっていくES型上司であってこそ、ETC型社員の潜在力を活かしていくことができるのではないだろうか。
 新卒入社社員像に目を向けられがちではあるが、その様な新卒入社社員をどの様に活かし育てていくべきかにこそ目を向けるべき時である。
 

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松本 真治

有限会社ワースプランニング 代表取締役

人材・組織開発コンサルタント。 人材・組織の潜在力を引き出すアセスメント(サーベイ)の企画/開発/運用から本質的課題を抽出し、課題解決のための最適なソリューション(研修・教育プログラム)の設計/運営までのコンサルティング・サービスを展開中。 人/組織が本来持ち備えている力(潜在力)を引き出し、人/組織が自律的で持続的な成長を遂げていく支援をさせていただいています。

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